前へ目次 次へ 32/130 一行詩集《冷艷》 視線の揺らぎ、恋の始まり。 跪く女を、あなたは見下ろしている。 存在の不確かさから垂れた糸 薄い膜を張った肢体にうつりこんだ彼 たぶんこの男は、涙の本当のところを知らない。 華やぐ瞬間を知っているくせに、 傾げた首の白さだけ見つめているらしい 柔らかな匂いは何にも優って 存在しない君を想う ひんやりと蒼い湖畔のくるぶし 綺麗すぎるものは美しくないのね かかとから堕ちてしまえ その手を止めて、わたしを見て 飽きもせず髪をすく。あなただけの微笑み。