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一行詩集《冷艷》
視線の揺らぎ、恋の始まり。
跪く女を、あなたは見下ろしている。
存在の不確かさから垂れた糸
薄い膜を張った肢体にうつりこんだ彼
たぶんこの男は、涙の本当のところを知らない。
華やぐ瞬間を知っているくせに、
傾げた首の白さだけ見つめているらしい
柔らかな匂いは何にも優って
存在しない君を想う
ひんやりと蒼い湖畔のくるぶし
綺麗すぎるものは美しくないのね
かかとから堕ちてしまえ
その手を止めて、わたしを見て
飽きもせず髪をすく。あなただけの微笑み。