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無月の街角
曇りの晩に、ピアスが一つ
歩道橋に、落ちていた。
それを拾って、付けようと
思ったわけでもないけれど
どうにもそれを放ってはおけず
わたしはそれを、手摺に飾った。
小雨の晩に、ピアスが一つ
歩道橋に、落ちていた。
それを拾って、身に付けようと
思うことはないけれど
泥にまみれることも哀れで
車に轢かれることも哀れで
わたしはそれを、手摺に飾った。
月なき夜に、見つけたピアスは
指先を濡らし、心を濡らした。
無月の影に、落としたピアスは
どうしてそれが、付けられようか?
中原中也『月夜の浜辺』オマージュ
書いてみて、女性は拾わないなと気付きました。
美しい少年の思い出なのだわ、と。