120/130
春の残像
入る箱のない哀しみ
0ばかり数えてしまうの
みんな歩き去ってゆくから
押し留めた涙は
タールのように粘ついて
あたしの喉にからまったまま
あなたの優しさに疚しさがあるなんて
知りたくはなかった
でもね
本当は知っていたのよ?
あなたがわたしに恋をしていたこと
けれどあなたは臆病だったし
わたしはそんなあなたを
男としては見れなかった
覚悟の足らない男が
どれほど家族に混乱を招くか
骨身に染みていたから
結局
好きにも嫌いにもなれない
その割り切れなさが
あなたを勘違いさせたのでしょうね
後ろ髪を引かれても
振り返ってはならなかったのだわ
友人以上になれないのなら
最後に一つ
わたし群青が好きだったの
あなたがくれる薔薇じゃなくて