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空にかける詩
この詩というものは
旅の仏師のごとく
その切っ先の鋭さと
わけもない荒さで
ちょっこりと
象ったのがよかろうと
思うのです。
野に据えられて
気づかぬものもあれば
花を添えるものもいて
蹴り飛ばす不埒ものがおれば
立て直す有徳の方がこられ
密やかに佇む
この何気なさこそ
いとおしいのです。
芸術が自己表現の手段となって久しいわけですが、
はて、
詩は公私の区別がつく前から詩でございましょう?
何物でもなく、何者も求めず
一心不乱に彫り、ただ置いておく。
人里離れた野山で
ふと見つける喜びを
忘れてしまいたくはないのです。
開発された故郷から
また人がいなくなって
葦が繁るのを眺めながら
とみにそう思います。