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第一話 新規ゲート開通に伴うあれやこれ (2)

「ゲート制御ユニットが来ないのなら、とりに行ってしまえばいいじゃない。」


 と言う新しい上司ラクーンさんは、生体置き換え推進派バイオの方のようだ。


 今の世の中、人は簡単に死ねない。


 世の中には、

 機械の臓器などをつかって身体を機械に置き換える『マシン』派の人。

 クローンテクノロジを使って生身の身体の臓器を置き換える『バイオ』派の人。

 それと少数だが生まれたままの身体の持ち主『ピュア』が混在する。

 かくいう自分も一度移植をうけているからバイオと言えなくもない。

 

 実際二大派閥となっているマシンとバイオ、どちらも倫理的な問題を抱えているけれど、利用する人間の多さから金を払えばそんな問題はないってことになっている。


 マシン派の人の中でも、どこまで機械にするかは人それぞれだが、機械の臓器の発達により、脳以外の臓器は置き換えが可能だ。

 アンダーグラウンドでは、認可されていない義手・義足が発達していて、人間の筋肉では出すことの出来ない出力のものもあると言われている。軍関係者には出回っているとか、いないとか……。


 脳以外は機械という強者も存在するが、弱点もある。

 電源問題だ。

 無線電源インフラが進んでいるこの世の中、常に給電状態にあるマシン派の身体ではあるが、万が一にでもバッテリー切れなど起こしたら人命に関わる。


 バイオ派の人は自分の臓器をクローニングしておき、悪くなったり、事故にあったりしたら移植によって、身体の一部を取り換えている。一部臓器の置き換えだけって人が大半ではあるけれど、新しい身体に脳を移植するっていうことも出来なくはない。

 バイオ派はバッテリーの心配はないけれど、やはり生身ということで事故にあうと危険である。

 

 とはいえ、ゲートが発達した世の中である。

 最先端医療施設への搬送は事故から5分とかからないわけで、俘虜の事故にあったとしてもマシン・バイオはともかくとして生き残ってしまうのが現代だ。

 

 マシン・バイオの発展によって死ねなくなった社会には定年なんてものは存在しない。したがって、見た目が12歳の子供でも実際は80ってことがなくもない。


 そう、ラクーンさんもいったいいくつなんだか……。


 一般人は死ぬまで働かなければならない。

 まあ、おかげで自殺者が急増しているけれど……。


 …………。


 …………。


 …………。



「ほんとにもう、ここまで僻地にくるとゲート発展途上地域ポブレの人って大変ってことがわかるわね。世界中どこにいても、通勤15分以内が可能な世の中で、移動に時間のかかる人里離れた僻地に住む人々は何を考えているんだか」


「たしかに、僕もポブレに住む人達の気持ちはわかりませんね。1週間ここにいただけで、もう暇で……」



 どこでも二点を結べるゲートだが、個人が自由に行きたいところ同士つなげるほど便利な訳ではない。

 対応する二点を結ぶには、それなりにエネルギーもかかるわけで、21世紀初頭でいう駅のようなもの『ゲート・ステーション』が存在する。

 人はステーションからそれぞれ好きなところへ通勤したり旅に出たりする。


 昔は長時間の列車の旅というものがあったらしいが、現在はそういったものはない。昔の映画を見てちょっと憧れたりするが……。


 世界最大のゲート・ハブ・ステーションはルート0と呼ばれており、昔でいう国と国を接続するステーションだ。――この時代に国はないが――ランクが下がるごとにルート1、2……10と数字が増えていくため、家の近くにあるステーションのルート番号でその家のおおよその経済力がわかる。

 ルート3から5程度がいわゆるエリート層、6から8が中間層、9,10は貧困層。そして、ルート10の先にゲート発展途上地域ポブレが存在する。

 

 末端の末端のゲートであるルート10の先には何もないので、前時代の乗り物である車や飛行機という名前の乗り物に乗って移動することになる。張り巡らされたゲート網の隙間の地域をポブレと呼んでいるわけだ。


 

「もともと栄えてたけど、その後落ちぶれちゃったポブレに住んでる人とか大変みたいよ」


「ゲートができたときに反対した人達ですね。既得権益を離せずにそのまま孤立しちゃいましたからね。でもこのゲート時代にポブレに住む人の意見なんて誰も聞きませんからね」


「でも、相当恨みがたまってるんじゃないかな」

 

「最近テレビで、『隔離地域ポブレの生活スタイル!』 とかやってましたよ。意外と楽しそうでしたよ」


「センター問い合わせ完了デス」


 問い合わせをしていたシエンが急に喋る。


「宇宙航行用のドライブにトラブルがあって、到着がおくれるとのことデス」


「シエンちゃん、報告ありがと。さて、とりに行くならさっき私がのってきた宇宙船があるわ」


「まさか運転してきたんじゃ」


「ええ、そうよ。免許持ってるもの」


 まさかの、とれたて免許である。

 事故ってこれの事故だったんじゃ……。


「さて、発送元のエウロパまで、ユニットをとりに行くわよ」


読んでいただき、ありがとうございました。

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