第十話 終焉 (1)
ようやく地下33階、システム室の前までたどり着いた。あとは上のラクーンさん達が社長室にたどり着くのを待つだけだ。
ケルベロスの紋章のあるドアの前で待機していると……。
「マスターから通信です」
「ただいまコントロールルームで交戦中。なんだか全体の統率が取れなくなってきているわね。そっちでなにかしたのかしら?」
ちょいちょい銃声やら、うめき声やらが聞こえてくるが、こちらの被害はなさそうだ。
「こっちでそいつらのリーダーを捕らえました。というか自滅してくれたというか……。とにかくこっちは最深部の入口まで無事たどり着きましたよ」
「リンクが切れたせいで、どうしていいかわからない奴が出てきているのね。こいつらあんまり戦闘慣れはしてないわ」
自分はどうして戦闘慣れしているんでしょうか。ラクーンさん……。
もう今さらつっこまないけど。いつかわかる時がくるんだろうか。
「一応、こっちの統率とってた奴を捕まえたぜ。向こうもこれ以上やりあうつもりもなさそうだ」
「オーケー! コントロールルームからゲートの制御を本社システムのケルベロス優先に戻してくれるかい?」
「システムだぁ? 俺はさっぱりだぞ……、嬢ちゃんに代わる」
「システムを切り替えるってどうすればいいのよ。私もわかんないわよ」
向こう側にシエンがいたら、今の指示で楽勝なんだけど。あ、そうかファイン博士のアンドロイドなら……。
「ファインさん、向こうのアンドロイドに指示お願いします。うちの二人はシステム関係はあんまりでして……」
「しょうがないか。シエンくん、向こうのアンドロイドをリモート操作するから、EEGを一部貸してくれないか?」
「承知いたしました。私を中継して向こうのリモート操作を許可。感覚器官のフィードバック開始」
「よし、これで、こちらから操作できる」
ファインさんは目をつぶって立っているだけだが、きっと向こう側を操作しているんだろう。
「コントロール部のシステムを乗っ取り前までリカバリー。ゲートシステム停止ウィルス削除。通常コントロールモードからケルベロス優先モードに変更と……」
「ついでに社長室も取り戻してくれるかい?」
「敵は残り二人だわ。オッケー、速攻で片づけるわよ、ティグレ君」
あ、ティグレさんも君付けなんだ……。軽く小競り合いみたいな音は伝わってきたが、銃声もないし、安心だ。
「最後はちょーっと荒っぽくなっちゃったけど、社長室は取り戻したわ。これからどうすればいいのかしら?」
「社長のデスクの一番上にある引き出しに、最深部の開閉スイッチがある。それを押してくれるか?」
「なんてとこにスイッチ作ってるのよ! おっと、そういえば、うちのボンクラ社長が残っていたわ。うーんどうしよう。面倒だから眠ってもらいましょうか」
「まて! やめろ!」
なんだか鈍い音がして人が倒れた音がする。さてはまた後頭部から重い一撃をくらわせたな……
「ま、ちょっと記憶なくすかもしれないけど、そのほうが都合がいいかもしれないし」
また、なんだか危ないこと言っているし……。まあ、ここからではツッコミも入れられない。今は非常時だし、いっか。
「最深部の開閉スイッチ押すわよ!」
静かに、かつゆっくり、ケルベロスシステム室の扉が開いていく。
円柱形の大型コンピュータが三台ならんでいるだけのなんの変哲もない部屋か。もうすこし未来的なものを期待してしまった。ファンの音だけが響く、それほど広くはない部屋だ。5人で入るといっぱいになってしまう。
「そういえば、ここのメンテナンスってどうしているんですか?」
「警備アンドロイドがいてな。そいつが、いろいろやってはいるけれど、ほとんどメンテナンスフリーだからなぁ」
「止まってください。危険です」
シエンがみんなを止めに入った。同時に目の前をレーザー光線がかすめた。
危っな。これって?
「警備アンドロイドがなぁ。スタンドアローンで動くんだ。そういえば……」
「そーいうことは、早く言ってください」
無事にここにたどり着いたのと、コントロールを取り戻したということで、すっかり安心しきっていたが……。こいつがラスボスってわけか……。
見た目は人型アンドロイドというよりは、前時代的なロボットという感じだ。多脚戦車に、大型のカメラが頭部? にむき出しについていて、両手? の部分にはレーザー砲が搭載されている。さしずめサジタリウスといったところか……。
「近づくとオートでレーザーが来る仕組みだったかなぁ? どうやって攻略するんだっけっかな。ライン? 覚えているかい?」
「わしに聞くか? 最深部はお前が作ったところだったろ?」
「ああ、そういえばそうか……」
「ってことは、攻略法は忘れたってことですね。全く厄介なものを最後に用意してくれましたね。こちらに遠距離用の武器なんて……。あ、そういえばアウトサイドピープルの人が銃もってたっけ? あれってもってますか?」
「一応奪ってきているけど、そんな豆鉄砲、絶対聞かないように作ったぞ」
「だから、なんで自慢げなんですか……」
しかし、文句を言っても始まらない。レーザー砲のチャージサイクルでもわかれば。対策もたてられるだろうか……。
「ああ、思い出した。確か背中にスイッチつけておいたぞ。それを押せば停まるはずだ」
「背中のスイッチですね……。って、そんなもんどうやって押すんですか」
「誰かが囮になっている隙に回り込むとかかな?」
「囮って……。両手にレーザー砲装備しているんですよ。アンドロイドが3体いればなんとかなったかもしれませんけど……。普通の人間なら一発で即死ですよ」
まてよ。そもそもアイツを倒さなくてもエキドナさえケルベロスに入れられればいいのでは?
「シエン、ケルベロスシステムと通信できるかい?」
「それもダメだ。ケルベロスシステムは有線通信回線で三体同時に眠らせないと、ロードしている間に三つ子のシステムが復旧してしまう」
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