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第八話 設立秘話 (4)


 ラインじいちゃんの話を聞いたところで、解決策という解決策は見いだせなかった。


 「それで、ファインさんは今どこに?」


 「すまんなあ。それが会社を乗っ取られたところで引きこもってしまってな」


 「どこにいるかわからないの? 本人にいろいろ聞きたいことがあるんだけど」


 この世界で人を一人探し出すのは困難だ。ラインじいちゃんが何か手がかりでも知っていればよかったんだが……。


 「うちの離れにあるゲートを使えば近くまでは行けるやろうな。けどアイツ内側から鍵をかけてしまって離れには入れんのや。たまーにアイツ目的でくるやつがいるときだけ、鍵が開くんやけどな。そういえば、人が入っていくのは見るけど、出てくるのは見かけんな。

 セキュリティーが頑丈で鍵も開かんしな。我ながら頑丈なつくりだ」


 「ってええ? そこから繋がってるの? 早く言ってよじいちゃん。

 つまりこのルートだけがファインさんに繋がるルートってことなんだね」


 「まあ、そうなるな。言ってみればルートマイナス1や。世界中でここだけがアイツとつながっとる」


 それなりにラインじいちゃんのこと信頼してるってことかな。でもいくらセキュリティーが頑丈でも建物は建物か。壁には鍵がかかっていないってことだから。シュリヒトの壁抜けがあれば鍵なんてかかってても大丈夫ってことか。


 「僕らには壁抜けがあるから、鍵かかってても大丈夫だけど」


 「でもなあ、強引には踏み入ってほしくないんやけど。てか、ファインに怒られるし」


 「そんなこと言っている場合じゃないわ。明日になればゲーニーが犯罪者扱いで世界中に晒されるわよ」


 あ、もしかしてラクーンさんは晒されないのか? 可能性はある。あのよくわからないお父様の権力は底がしれないからな。この中で晒される可能性があるのは僕と、運が悪くてシュリヒトか。


 「しゃーないな。俺も行くか」


 ラインじいちゃんは頭をかきながら準備をし始めた。


 ここには何度も来ていたが、離れに入るのは初めてだ。外からはほとんどドアの部分しかないように見えていたし、倉庫か何かかとも思っていたが、まさかゲートがつながっているだけどは思いもよらなかった。じいちゃんも入れて6人でドアの前までやってくる。


 「ファイン、お前に客やで。開けてや」


 先ずはラインじいちゃんが説得に入る。だが返事すら来ないようだった。


 「…………」


 「やっぱり、よんだ客が来るときしかあかんな」


 「強行突破よ」


 ラクーンさんが、壁抜け装置を起動して入っていく。向こう側から鍵を開けてくれた。反対側からは直ぐに開くようだ。ドアの先は直ぐにゲートが有り、ゲートの先にはまたドアが見える。結構厳重だな。そのドアにも鍵がかかっていたが、それもまた壁抜けで越える。


 ドアを開けると、海底なんだろうか? 上に海が見える。結構な空間だぞこれは。頭上を魚の群れが通っていく。どうやってこの空間を作ったんだろうか。それほど深い所に作ってあるわけではないらしく、少しだが太陽の光も届いているようだ。水面が影を落としていて綺麗だ。しかし、海中にいたなんて、流石に見つけようもなかった。

 

 ちなみに、シュリヒトはさすが水槽好きというか、ウキウキしている。魚の群れが通るたびに名前をいっているようだ。

 

 景観に感動していたのも束の間、アラートが鳴り響く、侵入者を知らせているようだ。って自分たちのことか……。

 逃げるにもどこにいったらよいかわからず警備のアンドロイドに囲まれてしまった。またか、この間から何度目だろうか。


 アンドロイドの奥から一人、金色の長い髪をした女性が現れる。アンドロイドたちより一回り大きいくらいだろうか?


 「久しぶりだなライン」


 最初に声をかけられたのはラインじいちゃんだった。

 

 「まーた太ったんじゃないのか?」


 「よう、ファイン! このアンドロイドたちどないかしてや」


 この人がファインさんか。てっきり男性だとばかり思ってた。


 「なんだなんだ? 沢山連れて見学にでもきたのか? 何もありゃしないぞ」


 「ファインさんですね。実はお話を伺いたくてやって来ました。ゲーニーといいます」


 「ああ、ラインの孫だろ? 知ってるよ。君もリストに入ってたからな」


 「リスト?」


 「ま、ここではなんだし、研究室の方にでも行くか」


 警備アンドロイドを両脇に従えながら、僕たちはファインさんの研究室へと移動した。研究室は世界中をモニターしているらしく、画面が山のように投影されている。それから、何人か研究員がいる。協力者というらしいが、ネームプレートの名前と先日アウトサイドピープルが発表していた行方不明者の名前が一致している。


 「彼らは私が招待したんだ。ここに来たらもう普通の生活には戻れないけど良ければ協力してくれってね。君とそこのシュリヒト君もリストに入ってたんだが、ゲート社に先にとられてしまってね」


 なるほど、ゲートに精通している人間やそうなりそうな人間を集めているのか……。


 「それで? だいたい何しに来たかはわかってるけど? 一応聞いておこうか?

 なんのためにここまでやってきたのか」


 「作った本人なら知っているかもしれない。エラー651とケルベロスについて。聞きにやってきました。それから大規模障害の原因についても」


 「ふーむ。何から説明してあげようか」


 とファインさんが言ったところでアラートがなる。

 

 「アウトサイドピープルからの動画配信です。国際通信で世界中に配信されています」


 研究員の一人がそう告げると、中央にアウトサイドピープルの動画が投影される。


 「我々はアウトサイドピープル。ゲートの存在によって、不利益を被ってきた人々の代弁者だ。ゲート社は我々が占拠した。今から接続を落とす。巻き込まれたくないのならばゲートから離れていることだな」


 ゲート社のメインコントロールルームに銃をもった紺の集団がいる。やつらの仲間だろうか? ゲート社内の人間もあちら側に数名いるようだ。


 「やっぱり、やりやがったかあいつら。これでまたゲートが使えなくなった」


読んでいただき、ありがとうございました。

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