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第八話 設立秘話 (3)


 「騙された?」


 「そうやな。最初の接続の話はこれくらいにして、会社の設立の話をしよか。

 ファインはこの技術を誰もが利用できるようにするために、ゲート社を作ろうとしたんや。いやまあ確かにちゃんと作った。最初は苦労しとったな。技術の内容は他人にしゃべれない。けど資金は欲しい。この技術を公開したら、金を出したい、いうやつはそれこそ山のように現れるやろう。というか独占したがるやろう。でもそうなるのを嫌がったからな。


 それからこうも言うとった『ゲートによって、失われるもんもある』とな。実際に公共交通機関のほとんどは無くなったしな。それで職を失うような人達もなんとかしたいと。


 それでな、信頼できる同期に声をかけていったんや。研究資金の援助っていう名目でな、幸いにも金をだしてくれるパトロンが見つかって研究が続けられるようになった。最初の頃はパトロンは、なんもいわんとお金を出してくれとった。でもそれがあかんかった。まあ、それがわかるのはもうちょい後の話や」


 …………。


 「資金集めがそこそこになると次にやったのがセキュリティの整備やったかな。あいつはそういうのんも得意やったからな。なんでも、お互いに監視しあって問題があるとこを修正するとかいうとったな。


 基本フレームはあのころから急速に発達し始めたアンドロイドのAIを利用しつつ、独自の進化アルゴリズム? を組み込んだとかいうとったな。そうして生まれたのが三つ子のセキュリティOS、えーとなんつったかな

 

 ケールベールやったかな」


 「じいちゃん、それってスペルは?」

 

 「Ker-Berやったかな?」


 「Ker-Ber-OSでケルベロスか。スペルが古代のギリシャ語か。じゃあ、ケルベロスもファインさんが作ったってことなのか」


 「ケールベールはずっと破られていないみたいやな。ケールベール本体は常に世界の情報を収集して最強のセキュリティであろうとするらしいんや。幾重にも張り巡された防壁とトラップ、自己修復機能があるからな。つまり50年前のシステムにして最新なんや。


 まあ、ケールベールが破られたらゲートのシステムが明るみにでるいう話やからな。細かいとこまでは俺にはわからんかったが、よう話してくれたっけな」


 …………。


 「ま、とにかくセキュリティもできたところで、ゲートシステムのモジュール化をしていったんや。ユニットにもコピーしたケールベールをコンパクトにしたもんを搭載するって話してたな。そうして出来上がったユニットとセキュリティシステムをもって、発表したんや。そんときはまだエネルギー問題もあったりで、つながるのは数メートル程度やったけどな。


 そんときに、いろいろ決まっとったんは、ユニット技術の秘匿と関われる人間を絞ったのと、マニュアルの隠滅やな。適正ある人間かつ本人のやる気がないとケールベールが認証せんのや」


 「それって、ユニットの技術者を増やしたり、減らしたりはケルベロスがやっているってこと?」


 「うーん。そうなるんやないかな。ユニットの秘匿性はあったものの技術としては面白いもんやった。金持ちたちや、いろんな国が資金提供しはじめて、研究室もどんどん大きくなっていった。あいつは接続効率がなんたらっていあながら、金のことはあまり考えずに研究しとった。


 そんで、ついに15年かけてニューヨーク、ブリュッセル、北京、トーキョーを結ぶとゲート社は一気に大きくなってもうた。もうアイツの手におえる会社やなかったんや。そんで、資金提供していた投資ファンドの連中が乗っ取りにはいった。

 よくある話しや。

 ただ身近で起こっただけのこと。

  

 もちろん、株式の何割かはファインがもっとったけど、太刀打ちできるレベルでもなかった」


 「てことは、ファインさんが構築した会社やシステムをそのまま乗っ取ったってことね」

 

 「ゲートはなぁ、ファインが開発しとったころからなんもかわっとらん。接続距離がちいとずつ伸びてるだけや」


 「そういえば、コアユニットだけはずっとかわってないのはそのせいだったのか」


 「どういうこと?」


 「ゲートはユニットの周りをいろいろいじって効率をあげたりはしてるけれど、コアになるユニットはずっと初期のままなんですよ」

 

 「なぜ、改良されないのか疑問だったんですけど」


 「改良できるやつがいねえってことなんだろうな」


 「俺が把握してるんはこんくらいやな。あとは社長もかわって、そこからはお得意の黙りやしな。誰に変わったかもわからんしな。ただゲート技術の詳細が公開されていないのは不幸中の幸いや。それだけはファインの思うとったようになっとる」


 「そう。もうひとつ、エキドナってなんだかわかる?

 今回の騒動の発端かもしれないんだけど」


 「エキドナ? さあなぁ、そんな言葉は聞かんかったなぁ」

 

 「うーん、ここで手詰まりかな。何かわかるとよかったんだけど」


 結局エキドナがなにかわからずじまいか。でも待てよ、ファインさんがケルベロスを作ったんならばバックドアもそのときにつけておいたのかもしれない。ファインさんの居場所さえわかれば……。


 「ケルベロスにパンを与えられるのは今のところファインさんだけか」


 「すまんなあ、俺に語れるのはここまでやな」


読んでいただき、ありがとうございました。

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