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第五話 犯行声明 (1)

 

 正面玄関の前では目立ちすぎるので、屋敷の北側へと移動してきた。


 「まず現在位置の確認ね。

 私たちがいるのはここ、屋敷の北側、壁以外特に何もないわ」


 そういえば、これだけ長くいてバレないのはなぜだろう。いや、バレているけど侵入してこないから監視しているだけなんだろうか。


 「ここにいることはバレてないんでしょうか?」


 「そうね。ここには外向きには監視カメラがないのよね。こうやって警備が軽そうなところをわざと見せておいて、中に入ったらトラップってのはよくある話よね」


 「それって、ここからは侵入できないってことですよね」


 「そうね。でも私たちが最終的に目指すのは北の棟なのよね。ここは遠回りだけど、まず東の棟に向かうわ」


 疑問点は多いが、とりあえずうなずく。東側も警備が薄いがこれもダミーかもしれないというつっこみは置いておこう。


 「北は警備が薄そうに見えて中は厳重そう。対して南は、監視カメラが見えるように配置してあるけど、これは屋敷の設計情報からハリボテなのが分かっているわ。

 シエンちゃんには西側で軽く暴れてもらった後に、光学迷彩でこっそり北の塔に向かってもらうわ」


 「でも南側の壁をどうやって超えるんですか?」


 「決まってるじゃない。強行突破よ」


 また、この笑顔だ。こういうことするときのラクーンさんはなんだかとっても嬉しそうだ。


 「ってそんなことしたらすぐばれるんじゃ」


 「そうよ。ばれてくれないと、私たちがこっそり忍び込めないじゃない」

 

 「何か質問は?」


 「山のようにありますけど。」


 …………。

 

 …………。


 …………。


 「時間だわ。行くわよゲーニー君」


 「やはり危険ですよ。他にもトラップとかあるかもしれないし」

 

 ラクーンさんは少し俯いている。考えなおしてくれるかもしれない。

 しかし次に出た言葉は……。


 「わたしは死なないわ。あなたが守るもの」


 って、何か違ーう。だいたいあの身のこなしの人を守れるわけがない。

 

 「予定どおり、私たちは東側の棟、シエンちゃんは西回りで北側の棟ね。

 大丈夫よ、シエンちゃんには手加減するように言っといたから。

 それに警備用アンドロイドの弱点も教えてあるし」


 そっちの心配かい。

 NAISOKの警備用アンドロイドに弱点なんてあったかなぁ。

 あったとしても極秘事項だろうにラクーンさんが知っているはずはないんだけど。


 「囮のシエンちゃんが敵を引き付けている間に、私たちは壁の穴を通ってこっそり東側の棟に侵入するわよ。じゃあ、シエンちゃん、やっちゃって」

 

 と、同時に壁の破壊音が響き渡る。

 

 作戦考えた意味あったんだろうか……。


 と考えている間にも警報が鳴り出した。

 

 これじゃ侵入どころの騒ぎではないんじゃないのかな。

 器物破損はよくないと思うけどなぁ。

 シエンがわざと見つかる位置で立ち止まっている。

 本当に大丈夫なんだろうか……

 

 「私たちは隠れてるわよ」


 「はっ、はい」

   

 「あっちにいったぞー」


 「逃がすな」


 「アンドロイド一体だけか?」


 うーん。なんというベタな台詞だろうか。

 まあ、実際こんなこと起きたらそんな言葉しかでてこないだろうけど。


 …………。


 …………。


 …………。

 

 人の声で西側へ遠ざかっていくのが聞こえる。    

 

 「さ、今のうちに私たちは東の棟へ向かうわよ」


 小走りでハリボテの監視カメラの横を走り抜け、あっさりと東の塔にたどり着く。


 「ま、個人宅でここまで警備してりゃ上々よね。

 私にとっては何の問題もないけど」


 東側の棟の入口で仁王立ちしてラクーンさんが口走っている。


 「あ、鍵かかってますよ。

 そりゃそうですよね。

 あきらめましょ」


 「ちょっと貸して?」

 

 と、ラクーンさんが慣れた手つきでカチャカチャと鍵をいじると……


 「開いたわ。今時こんな古臭い錠前つけてるほうが悪いわ」


 すっかり悪役キャラな気がする……

 もはや何も言うまい。


 「シエンのほうはどうなったんでしょうかね」


 「やばくなったら狼煙をあげるように言っといたから大丈夫だと思うわ」


 「そんな、狼煙なんて敵に気づかれるだけじゃないですか。

 なんでそんな古典的なんですか」


 「冗談よ。でも早くしないと、警備がここも探しにくるわよ」


 「ったく、なんで階段なんですかね。エレベータくらいついててもいいのに。

 10階分の高さはありますよ」


 「エレベータになんか乗っちゃったら気づかれちゃうじゃない?」


 「あ、それもそうですね」


 普段トレーニングしている自分でさえ息切れする高さを登っているのにラクーンさんはまったく息を乱していない。いったいなんなんだこの人?


 「ちょっと、ラクーンさんなんでそんなに速いんですか?」


 「いやゲーニー君が遅いのよ。さては日ごろ運動してないな~。

 そのうち太るわよ~」


 「してますよ、ちゃんと。まったく、なんで息一つみださないんだか」


 あ、そっか。

 そもそもラクーンさん身体が軽いんだった……。

 

 と言っている間にようやく東側の塔の一番上までたどり着く。

 息が切れて、もう吐きそうだ。


 よく漫画であるやつだけど、あんなの嘘っぽいと思ってた。


 ほんとだ……

 気持ち悪い……




読んでいただき、ありがとうございました。

感想、レビューなどお時間がありましたらお願いいたします。

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