第四話 ゲートをくぐるとそこは火星でした (3)
――火星の街中を4人で移動する。月? フォボスとダイモスがよく見える。昨日から移動ばっかりだ。エウロパの航路を一往復半した後、火星をこうしてうろうろしているわけだ。すっかり日が暮れてしまった。まあ、地球の夜とリンクしているわけではないんだけど。
ゲートが持っていかれたという屋敷の前に来てみたはいいが、頑丈そうな門に高い塀が続いている。
「本当にこの屋敷でいいんでしょうね? ハオ君?」
「バイオ派のお偉いさんの屋敷だし、オレこの屋敷に運び込んだってのをちょうど聞いちまったし。
それにここを監視している仲間から、何人か入ったきり出てこない人がいるって話もあるし」
「しっかし、まあまあ大きいわね。この中のどこかってことしかわかってないのかしら?」
労働側のマシンと管理側のバイオが火星で揉めてるって話はあるけれど、ゲートなんて何に使うんだろう? しかもペアでそろっているとなると裏ゲート業界も放ってはおけないのかもしれない。今まではそんなものがあることすら気づかなかったが。本部は知っているはずだ。なぜ放置されているのか。
「中の情報はオレ達もわかんね~。わかってるのは、ここはバイオ派が集まりに使われているってことくらいかな」
「あんたも使えないわね~。ま、いいわ。ここまでで。
ゲートまでたどり着いてないんだから案内料は払わないわよ」
案内料……
忘れていた。どこからお金がでてるんだか……
ってちゃっかり払わないことにしてるし。
「この子連れて行かなくていいんですか?」
「屋敷に? 仮にゲートがあったとしたら、私たちはくぐって月まで行くけど、この子連れていけないじゃない?」
「あ、そうか。結構考えているんですね」
「ここには、三人で忍び込むわ」
「シエンちゃん、この屋敷の内部構造のデータ見つけられるかしら?
この規模の屋敷となるとそうないはずなんだけど」
「それなら、〇岩のデータベースあさってみるといいですよ」
「ゲーニー君なんで?」
「この施工方式は〇岩で、おそらく建築士はノーマン・ナンドウ。
僕、建築も結構好きでして。外壁みればどこの建材を使っているかくらいわかりますよ。
設計図なら施工会社には残っているはずだから、ここの外観と設計者とマッチするものはそうないはずです」
いけない、いつの間にかこの法にふれる行為もなれてきてしまった。
ラクーンさんのせいだ。
「いろいろ違法ですが、今さらですね」
「シエンお願い。衛星写真からここの外観をスキャンしてみて。それから、」
「わかっています。〇岩のデータベースからマッチングするものを探すんですね。
ちょっと厳重ですね。さすがに大手さんですか」
「時間かかりそうかしら?」
「いえ、もうすぐ照合が終わります」
流石、最新鋭機だ。本気を出せばこんなことも……
いや出来ないようになっているはずだ。これもまた、あのミリオタのおっさんが違法ソフトばっかりインストールしてくれたおかげか。
変な趣味も役に立つもんだ。
「ついでにセキュリティ会社の利用履歴が出てきました。
ここはNAISOKが警備担当しているようですね」
「その次いでだから、セキュリティも乗っ取っちゃたり出来るかしら?」
「さすがにセキュリティ会社は硬くて……。
ネットワークの構築具合からして、基本的にはAI監視カメラと警備用アンドロイドが2体の様ですが」
「今時有人警備もしてないでしょうから、問題はカメラとアンドロイドってことね」
「それと、誰かと鉢合わせなければですかね」
「それなら、先程サーモカメラでスキャンしたので、屋敷にいる人数は把握できています」
「さっすが、シエンちゃん。やるわね」
なんだろう。この手慣れた感じ……
やっぱりこの人何者かつかめないな。
単なる元リゾート開発部の上司ではない。
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