第三話 原因調査!エウロパへ引き返せ (2)
――二課のシャトルの経費についてひたすら悩んでいた頃、謎の人ラクーンさんの父から電話がかかってきた。
なぜ、ゲート社の直通回線を使えるのか……
「もー、仕事中に会社にかけてくるなんて何事かしら」
「お繋ぎしますか?」
「ま、いーわ。
サウンドオンリーでお願いね」
「ラクーンちゃーん。
ちょっと、やっだー。心配したじゃない!」
なんだろう、お父様? 声は低いけど、完全におネエ様ですけど。
「ちゃんはやめてって言ってるじゃない。
しかもこっちは仕事中なのよ」
「もー、相変わらず素直じゃない子ね。
それより、その仕事が大変なんじゃない。いいから戻っていらっしゃい」
突然の電話で相手がオネエで、ラクーンさんの父で、直通回線で……
話がよけいにややこしい方向に……
「今あなたたちのところに捜査班が向かっているわ」
「はい?
捜査って? 解析じゃなくてですか?」
つい割り込んでしまった。
「ああ、あなたね。容疑者のゲート技術者、ゲーニーくん。」
「はい? はい。なぜ、名前を?」
他に疑問が山のように沸いたが変な受け答えになってしまった。
「そんなの、ある程度の権力行使すれば簡単よ」
「ある程度の権力って。ラクーンさんのお父様っていったい……」
いけない、また相手のペースにはまっている。
この親子のペースは危険すぎる。早く軌道修正しないと。
「今世界中が大変なのはあなたたちもわかってるわよね?
その原因がきみにあるって話になってるのよ。世界経済連合とゲート社の上層部の間では」
「それで、一緒に行動してるウチの子や、人型端末HTA-100……。
シエンちゃんだったかしら?も一緒に捜索してるのよ」
「はぁ」
動揺して言葉がでない。しかし、自分もラクーンさんやシエンを疑ったように周りもここにいる人間を疑ったわけだ。しかも、自分を……
確かにこの中では一番疑わしい。なるほど……。
「ガニメデに関係者が派遣されてもうすぐ到着する頃らしいけどももう対面しちゃったかしら?
その前にウチの子には帰るように言いたかったんだけども」
「実はガニメデは出てしまって、いまエウロパへの航路にのってるところです」
「あら、やだ。それちょっとそれまずいわよ。
みんな一緒に逃げちゃったみたいじゃない。だめよーちゃんといないと」
「でも、この不具合の解析のためにユニットを月まで運びたいんです」
「そんなのはいいのよ。後でやるんだから。
それより、今問題になっているのは、誰がやったかってことなのよ。
一人のゲートユニット技術者の不注意による事故ってことになっているんだから」
「なんで名前が公開されないんでしょうか」
「そりゃあ、私がちょこっと手をまわして匿名にしてもらってるんじゃない。
ウチの子がこんな事件に関わってたなんて知れたら、それこそ大事件よ」
「は、はぁ」
展開がよくわからない。
「それで、さっきからいってるけど。帰ってらっしゃい、ラクーンちゃん
あなたがいなくても大丈夫よ。その子達もなんとかするわ」
「嫌よ。これは私の仕事なの。
たとえゲーニーくんに今日会ったばかりでも、私が責任を取らないといけないんだから」
「だって、時間の問題なのよ。あなたたちが捕まっちゃうのも。
三人で行動していたら、あなたただって危ないんだから」
「もう、いいわ。シエンちゃん、きっていいわ」
「わかりました」
ぷつっ、
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