5話 関所
誤字訂正しました。
3大陸国はシュバルツ、ヴァリャーグ、ロードスの3カ国です。
寝返ったアドルフさんから追手の騎兵がくるということで急いで外に出た。
といってもけが人がいるのでそこまで速度は出ない。
迷宮の外に出てみるとそこは荒野の真っただ中だった。
夜だったので暗視装置をつけてみて周りを見渡すと遠くの方から何かがやってくる。
おそらく、あれがアドルフが言っていた追手だろう。
「騎兵が見えます。距離は10kmぐらいです・・・って距離の単位は㎞でいいんですか?」
「あってるぞ。だいたいこれぐらいが1mぐらいでこれの1000倍がkmだ」
アドルフさんが手で示してくれた。
うん、長さの単位はほとんど一緒だな。
「まずいな。こんなところで隠れるところはないぞ」
たしかに、ここが山の中とかだったらまだしも荒野の真っただ中だ。
そのおかげで見通しがかなりいい。
「仕方ない。迷宮の中でやり過ごすか」
3人が戻ろうとする。
「待ってください」
「どうした?」
「騎兵の速さってどれくらいですか?」
「そうだな、速歩で分速200mぐらいだな」
つまり、時速12㎞ぐらい?
騎兵って意外に遅いのね(いや、現代の機械が速すぎるのか)
「国璽をどこかに届けるためにも急いだほうがいいでしょう?それだったらこれで逃げましょう」
頭の中でイメージしたものを創りだす。
M1114ハンヴィー(改)
米軍がジープの後継として開発したハンヴィーの装甲強化バージョンだ。
ただ、そのままだといろいろ不都合なので右ハンドル化、運転席のサイズを日本人のサイズに合わせるなどの改良を行っている。
「これは?」
「車っていうんだけど、まぁ馬車の車がない奴とでも考えてくれていいと思うよ」
「はぁ・・・」
時間がないのでさっさと乗る。
異世界組3人がドアを開けるのに少し困っていたのはご愛敬だ。
「じゃあ、出発するぞ」
「おい、これでほんとに逃げられるんだろな?」
「もちろん。それじゃ、出発」
日本じゃまだ免許を取れる年齢じゃなかったけど、父さんが運転していたのを見ていたから大体わかる。
道路交通法どころか道路すらちゃんとしたものがないのなら、そこまで問題にならないはず。
木とかぶつかる物もないしね。
アクセルを踏み込み、出発する。
事前にキースに聞いていた目的地の方向に車を進める。
みるみる後方の騎兵との距離が離れる。
車ってスゲー
そこからほぼ一直線、走り続けていた。
「さてと、そろそろですかね」
後ろを見てみると乗っていた3人とも外を見る姿勢のまま固まっていた。
走行中ずっとこうだったな。ずっと運転に手中していて気づかなかったけど。
「テツロー・・・・これはいったい・・・・」
「これは車ですけど」
「そうじゃなくて、そっちの世界にはこんなものがあるのか?」
「まあ、結構ありますよ。家族に1台以上ある家もありますから」
「・・・・そっちの世界は恐ろしいな」
「こっちの世界は魔法がない代わりにこの車みたいな科学技術が発達した世界ですからね」
そのせいで人類がいつ滅んでもおかしくない状況になっているが。
そういや俺の能力で核兵器って作れるの?・・・・やばくない?歩く核兵器かよ。
「おい?テツロー?」
「っは!すみませんボーっとしてました」
「そうじゃなくて前、前」
「前?ぬおっ!」
前にあったのは柵だった。
ついでに兵士もいる。
「ここは?」
「関所だ。少し待ってろ。話をつけてくる。ライナー来てくれ」
キースとライナーが下りる。
出てきた兵士と少し話した後、建物の中に入っていった。
残されたのは俺とアドルフだけだった。
「大丈夫ですかね、あの二人?」
「まあ大丈夫だろう、親衛隊だし」
「その、親衛隊ってなんですか?あとキースが言っていた王国派というのは・・・」
「そうか、お前は異世界から来たもんな。よし、全部1から説明してやるよ」
まずは大雑把な世界地図を描いて見せてくれた。
まず3大陸国と呼ばれるのが東大陸にあるヴァリャーグ帝国、南大陸にあるロードス王国、西大陸にあるシュバルツ連邦の3カ国が存在する。
基本的に帝国、王国、連邦と言ったらこの3カ国を指す。
この世界はこの3勢力に分かれて対立しているらしい。
世界征服を目指すヴァリャーグ帝国。
宗教色が強く、布教のため戦争をふっかるロードス王国。
自国の安定のためなら虐殺だってするシュバルツ連邦。
中小国から見るとこんな感じに見えるらしい。
現在は大国が存在していない北大陸での覇権争いが続いている
今のところ大国同士の戦争がなく、中小国での争いが主らしい。
地球でいうならば冷戦期のようなものだ。
大国同士は戦わず、大国が支援する国同士が戦う代理戦争が勃発してる。
そして今国内で代理戦争のようなものが起きているのがここ、アルガリア王国。
連邦と古くからの同盟国だったが、前国王の急死をきっかけに貴族の反乱がおきた。
したがって、現在は連邦派の支援を受けた王太子軍、王国派、帝国派の三勢力による三つ巴の戦いになっている。
ここでポイントなのが国王が亡くなってもまだ「王太子」ということである。
もともと、前国王の代から貴族の反抗は見え隠れしていた。
皇太子の身を案じた前国王は皇太子の身柄を王都からかなり離れた離宮に住まわせていたそうだ。
王都では貴族の対立が激化していた。
そんな折、国王が急死。
それと前後する形で王国派の貴族が兵を率いて王都に入った。
これに反発した連邦派、帝国派の貴族が同じく兵を率いていったのが内戦の始まりだった。
ここでアルガリア王国の陸軍について触れておく。
常備軍・・・5個師団。アルガリア王国軍の主力をなしている。基本的に連隊単位で各地に駐留。
近衛師団・・1個師団。主に貴族の子弟から編成された部隊。王都に駐留。
貴族軍・・・領地を持つ貴族が領民から兵を徴募して編成された軍。ほとんど農奴兵。
親衛隊・・・国王が私費で編成された部隊。基本的に常備軍からの引き抜き。
この4つが基本らしい。
親衛隊に所属していたのがキースとライナーさんで近衛師団に所属していたのがアドルフ・・・ということらしい。
ちなみに3人とも王都勤務でもともと知り合いだったそうだ。
話を内戦に戻そう。
王が急死し、混乱の中にある王都で蜂起した王国派は帝国派、連邦派の貴族を片づけた。
王都にいた近衛師団は内部対立によりほとんど機能しなかった。
アドルフは数少ない平民出身の近衛兵だったのでなすがままにしていたら結局王都を制圧した王国派に属することになったそうだ。
だからあのとき簡単に降伏したわけだ。
王都を制圧した王国派の軍は続いて王宮の制圧にとりかかった。
王宮には親衛隊しかいないので王国派としてはこれを簡単にできると踏んでいたそうだ。
が、現実はそうはいかなかった。
人数が少ないとはいえ平民を中心に編成された親衛隊は近衛師団とは異なり内部での対立はなかった。
王の遺言である「王太子を国王に」を忠実に守るため親衛隊は強固に抵抗した。
しかし、数の力には勝てず親衛隊は王宮を放棄し、王太子がいる離宮を目指した。
その時に国璽を持ち出した。
王国派の重囲を破った親衛隊は少しでも捕捉されるのを避けるため少数に分かれた。
これを追跡する部隊の一つの先発隊隊長にアドルフが任命されて・・・というのが流れだそうだ。
ちなみにさっきの戦闘は殺す気のない戦闘だったらしい。
3人でよく模擬戦をするとよく憲兵がやってきたそうだ。
「俺、こんな内戦中にどうすればいいんですかね?」
「さぁ?たぶんこれから離宮の方に向かうことになってそこからは皇太子次第だな。っと出てきたな」
キースとライナーさんが出てきた。
「いいぞ。出してくれ。ここから先の通行証をもらった」
キースが乗り込み、ライナーさんも乗り込んできた。
エンジンをかけ、出発しようとするといきなり兵士が大勢出てきた。
「ちょっとキース、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。出していいぞ」
「整列!ライナー親衛隊隊長およびキース副隊長に敬礼!」
兵士たちが一斉に胸に手を当てる敬礼(ゾグー式敬礼だったか?)をした。
なんとなくそこを猛スピードで走るのは気が引けたのでまるで観閲行進のようなのろのろとしたスピードで走ることになった。
関所を出た後、離宮に向かってアクセルを踏み込んでいった。
報告が遅れましたが設定集として0章を新設しました。
基本的には読み飛ばしてもらってもいいですが、読んでもらった方が分かりやすいと思います。