集合
気が付くと辰美は自分の部屋のベッドに居た。見慣れた天井が視界を満たす。
「ああっ、辰美さん良かった。気がついたのですね。」
最早聞きなれた声が不愉快に響く。何をどう文句たれたものかと思いながらむかむかと湧き上がる怒りの表現を探していると、
「だから大丈夫だって言ったじゃない。」
「万が一ってことがあるよ麗ちゃん。とにかく意識が戻って良かった。」
違う意味で聞きなれた声がした。驚いて半身を起こすと三つの顔が並んでいた。
右からジェイ、麗華、幸也の順番で。
「な…なな…な…」
「これ以上あなたを見過ごすわけに行かなかったのよ。」
「麗ちゃん、辰美ちゃんが大学に来てるのにサークル出ないなんておかしいって。悪霊が悪さして体調崩したんじゃないかって心配したんだよ。」
「私は心配なんかしてないわ。」
「もう、素直じゃないなあ。」
「…て、」
二人の会話に辛うじて辰美の小さな声が混じった。
「な…」
辰美は余りの出来事に大きく目を見開いて身体を震わせていた。軽くパニックに陥っている。麗華のことは置いておくとしても仮にも幸也は好きな相手だ。寝起きの乱れた姿など見せたくも無い。
「あ、ゴメンね。女性の部屋に勝手に上がるのもどうかと思ったんだけど…」
幸也がいつもの笑顔で言う。自分相手に向けられた幸也の笑顔ともなればかなりのトキメキ物件だが今はそれどころではない。辰美はすくっとベッドの上に立ち上がると、そのまま二人を立たせ、ぐいぐいと押して部屋の外へ出した。
「すみません。私が余計なことをしたばかりに~」
と、いいながらジェイもついでに外に出された。その後で辰美はさっとスマホを出すとたたたたたたたたと猛烈な勢いで画面をタッチした。
程なくして軽快な音が幸也のスマホから流れた。
「あ、身支度整えるからちょっと待ってってメール入った。」
「何を今更…」
「麗ちゃんも女の子なんだから女子の気持ち分かろうよ…」
「幸はお姉さん三人もいるものね。」
「うん。慣れっこ。」
「その無駄な笑顔は処世術なんでしょうけど、女子の誤解を生むわよ?」
「便利でいいんだけどねぇ。」
「そのアンタの食えないところ、辰美にも見せてあげたいわ…」
「お二人とも、仲がよろしいんですね。」
二人の会話を黙って聞いていたジェイが口を挟んだ。
「幼馴染だから。」
お互いがお互いを指差してそう言った。
「ところで、」
麗華が長い髪をさらりと流して話を変えた。
「話、聞かせてもらいましょうか。」
長い前髪の奥で尋常ならざるものが光った。




