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私と竜と探偵と  作者: 零
3/25

不法侵入

「ふう。」

辰美は自宅のベッドに腰を下ろしてため息をついた。まだぽたぽたと水滴の落ちる髪をわしわしとタオルで拭く。辰美は今年の春に念願の一人暮らしを手に入れた大学一年生だ。

 ワンルームのアパートが辰美の小さな城だ。シンプルではあるがそれなりに可愛げのある家具を並べて、本棚には入学からこつこつ集めている推理小説が恋愛小説に混じって並び始めている。

「偉そうな事、言っちゃったけど、私も俄かミス研部員よねー。」

実を言えば、幸也に出会うまでミステリーにはさほど興味が無かった。

 大学の入学早々、構内で迷った辰美を案内してくれたのが幸也だった。柔らかな笑顔と優しさに定番の一目惚れだった。

 更に定番にサークル紹介で幸也を見つけ、即入部というあまりに定番の流れで来た。ミステリーにはそれほど明るくないにも関わらず。

 ただ、本を読むのは好きだったため、ミステリー関連の書物を読んで検証する、という部活内容は辰美に合っていた。彼女にしてみれば自分の読む本の幅が広がった程度の出来事だった。

「…今日の部活も激しい議論だったなぁ。」

ベッドの上にごろりと横になって、辰美は今日の出来事を反芻していた。ミステリー研究会は全部で八名。今日は映画化もされた話題のミステリー物のトリックを検証していた。確定しないのなんのと騒ぐのは部長ではない。会長はむしろそうしてヒートアップするマニアを抑える役割をしているように見えた。

(またあの後光が差す様なカタルシスマジックがいいのよね。)

くすくすと辰美は笑った。

幸也を思い出すだけで楽しくて幸せな気持ちになった。

「あなたには悪霊がとり憑いている!」

その幸せを一気にぶち破る声が脳裏に響いた。

(サダコ…)

ついでに嫌なものを思い出したと、辰美はあからさまに眉間に皺を寄せた。思えばあれだけが入学後の出来事で定番ではないのか。

(でも喧嘩の売り方は定番だわね。)

再び辰美は笑った。と、

カチャン

不意に何かの外れる音がした。何だろう、と思って音の方を見るとクローゼットの扉が小さく音をたてて開いた。

 ああ、またか、と辰美は思った。ここ一週間ほど、クローゼットの扉が勝手に開いていることがあった。調べても何も無いし、アパート自体そう新しくも無い建物だから、鍵が古くなったのだろうと思っていた。

(そういえばサダコが喧嘩売ってくるようになったのも同じ頃ね。)

サダコの呪い?などと半分冗談で思いながらまたおかしくなって笑った。そして、クローゼットの扉を閉めるために近づいた辰美の目にとんでもないものが飛び込んできた。

クローゼットの扉にかかる手。そして

「あの~できれば驚かないでいただきた…」

恐る恐る顔を出した男に辰美はびしっと指を突きつけた。

「不法侵入。」

「あ、ええまぁ、確かにそうであることは認めますが…」

男はそう言いながら徐々にクローゼットから姿を表した。普通の、あまりに普通のスーツ姿だった。これから就職活動ですかと言いたくなるほど。

「なるほど。最近の犯罪者は至って普通の格好をしていると聞くけどそのとおりね!」

「いえ僕は決して怪しいものでは、」

「十分怪しいでしょ!とりあえず一件は犯罪行為してるじゃない。」

「それは認めますが事情を説明させてください」

「何よ。一応聞こうじゃない。」

「あの、大変申し上げにくいことなのですが…」

「早く言いなさいよ。こっちは今すぐ通報した方が良いのよ?」

「あっ、あなたはとり憑かれているんです!」

「出て行けー!」

ほぼ反射的に辰美は男を戸外へ放り出し、即座に通報した。


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