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私と竜と探偵と  作者: 零
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続くもの

辰美は空を見上げていた。気が付くとあれからもう一ヶ月になる。今となってはあの喧騒が嘘のようだった。

 あまりにも静かで。あまりにも退屈だった。

「つまらなそうだね。」

声をかけてきたのは幸也だった。

 今はサークル活動の時間だった。今日はたまたま他のメンバーが欠席で、あの日以来初めての二人きりのサークル活動だった。今日は最近発売になったミステリーシリーズの新作について語り合うはずで、その新刊も買ってはあった。ただ、開いても読む気になれなかっただけで。

「そんなことは…ない…はず…」

元に戻っただけなのに。以前の幸せが今は少し寂しい。それこそ、幸也に声をかけられたなんてことになったらもう。それだけで。

 幸せな気持ちにならないわけじゃない。ただ、それこそ、魂がどこか抜け落ちてしまったかのようで。身体が半分、なくなってしまったようで。

「僕も、寂しいよ。」

幸也が言った。あの喧騒から離れて、寂しくない者なんているんだろうか、と幸也は零した。その、憂いを帯びた表情はかなりポイント高いな、などと、ぼんやりと辰美は思った。同じことを思うにも前はもっとうきうきした気がする。

 その、ポイント高い憂い顔が急にぱっと華やいだ。

「ね、辰美ちゃん。隣、行かない?」

「え?」

「麗ちゃんだって寂しいはずだよ?あまり顔には出さないけど…それにね。」

幸也はふふっと悪戯っぽい笑顔を見せて嬉しそうに隣の部室を目指して歩いた。

 辰美の手を取って。

 そこまでされるとさすがにどきどきする。寂しいなんて、忘れてしまいそうに。

「お邪魔しまーす。」

幸也が盛大に宣言した直後、ぼんっと派手な音と煙が辺りを満たした。

「何これ。」

そう、最初に言ったのは誰だったか。もうもうと上がる煙の中から黒い影が辰美に向かって飛んできた。

「きゃあっ」

声を上げて辰美が転んだ。

 その、胸に。

「たつみいいいいいい!」

泣きべその緑のドラゴンが目にいっぱいの涙をためてしがみついていた。辰美は声を忘れるほど驚いた。

「麗ちゃん!成功したんだね!」

良く見ると足元には訳の分からない文字が円状に並んでいる。

「ただの偶然かもしれないわ。」

衝撃でくらくらする頭を抑えていると、懐かしい手が麗華に差し出された。

「偶然は必然だろう。麗華。久しいな。」

「黒耀!」

麗華はベールを投げ捨てて黒いドラゴンに抱きついた。

「麗華さん…前髪、切ったんですね…いたたたた。」

最後に出てきたのはジェイだった。またしても他の旅行者の下敷きになってしまった彼を幸也が助け起こす。

 聞きたいことは色々あった。これからまた何かが起こるのかもしれない。でも、辰美にはどうしても先に言いたい事があった。

「お帰り!翡翠!みんな!」

辰美はぎゅうっと翡翠を抱きしめた。。

 それは、なくしていた魂が戻ってきたような感覚だった。


お付き合いありがとうございました☆ドラゴン大好きなので、ついつい出してしまいますね。でも、様々なドラゴンが出てたり、割としっかりめに人間との関りを設定したのは初めてかもしれません。黒曜と麗華の話も書きたいなーなど思いつつ書いていない作品だったりします。

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