分かつもの、繋がるもの
その日は、空が高く晴れていた。結局、姫君の全快を待たずに一行は自分の世界へ帰ることになった。
翡翠や黒耀のことを思えば、まだ検討の余地はあったのだが、銀バッジの使用期限はそろそろ切れる頃だった。
「ただ、あなた方の功績はあまりにも大きい。そして翡翠や黒耀との絆もあります。」
「いずれまた、会える時もあるだろう。私も会いたい。異界の恩人に。」
「その時はまた、私が銀バッジをお届けしますよ。」
「でも、その世界の壁の穴は不安定なものなのでしょう?必ずしもまた繋がるとも信じがたいわ。」
麗華は言葉には出さないが黒耀と離れたがらなかった。帰ることが決まった後などはずっと黒耀にくっついていた。黒耀もまた、過去の傷を越えて繋いだ縁を切りがたく、麗華に寄り添っていた。ただ、静かに。静かに別れを惜しんでいた。
「私も…翡翠と別れたくない…」
「辰美…」
翡翠は辰美にぎゅっとしがみついた。
「その、絆は世界を隔てる壁を越えても生きるでしょう。だからきっとまた、皆さんの元に繋がります。」
「うちのクローゼットに?」
「そうですね。」
「会える?ジェイとも。」
「会えますよ。また。」
別れを惜しんでいると、一行の銀バッジにピシリと亀裂が生じた。
「さあ。あなた方の身体を痛めてはいけません。お送りします。あなた方の世界へ。」
術者の一人がそう言うと七人の術者が術を整えた。移動の指向性を正しく設定して、敢えて次元を越えた移動を行うにはその道の力ある人間とドラゴンの協力が不可欠だった。翡翠と黒耀がそのドラゴンの役を買って出た。絆のある人間の門出を他のドラゴンに任せるわけにはいかないらしい。
「じゃあ、またね!」
辰美は涙を拭きながら強がりの笑顔を見せた。
「また会いましょう。」
幸也は満足気に笑っている。謎が解けてすっきりしたのだろう。
「…黒耀…」
麗華は最後の最後に瞳を濡らしていた。
「また会おう麗華。俺の心はいつでも麗華と共にある。」
黒耀の言葉に促され、最後まで離れなかった麗華もその世界の地を蹴った。
「たつみぃ!みんなぁ!」
翡翠の声が空に消える。次元の穴は程なく閉じ、世界はまた強固な障壁を以って分かたれた。




