再生
姫君はその後、辰美と翡翠の尽力の結果回復の一途を辿り、三日後に意識を回復した。城が歓喜の渦に包まれたことは言うまでもない。臥せっていた王妃も姫の回復の報を受けて生気を取り戻した。
「君たちには世話になった。感謝してもしきれない。」
王は辰美の手を握って涙を零さんばかりに感激した。
「そんなにたいそうなことはしてないよ。私は翡翠を守りたかっただけ。」
「私は仕事をしただけです。」
「私は自分の好奇心を満たしたかっただけ。」
「僕は真実を知りたかっただけ。」
そう言って全員が顔を見合わせてふふっと笑った。辰美と翡翠はあの後、ほとんど姫君に付きっ切りで解毒を施していた。程なくして医師団が毒の成分を解析し、解毒剤を完成させたがその頃にはもうすっかり毒は抜けていた。
「グレオとシャナルはどうなりました?」
「それが…」
探偵協会長ギルは渋い顔をした。ジェイが申し訳無さそうに口を開く。
「…逃げられました。」
「ええっ」
「何らかの術を使ったようです。牢の鍵にも壁にも床にも天井にも、抜け出した形跡はありませんでした。」
「…それじゃあ仕方ないわね。」
「奴らなら、ソウ国へ逃亡したぞ。ハミルが千里眼で確認した。」
黒いドラゴンがそう言いながら少々窮屈そうに部屋に入ってきた。
「おお。ハミル殿の千里眼であれば確かだろう。ハミル殿は息災か?」
王様が目を輝かせた。
「元気だ。」
そう応える黒いドラゴンの赤い瞳が柔らかに微笑んだ。
「黒耀。」
麗華がそう呼んで黒いドラゴンに寄り添う。
「麗華。傷は大事無いか。」
「あの時、治ったでしょう。もうなんとも無いわ。」
「そうか。人間の身体のことは分からないからな。」
「心配してくれてありがとう。」
今まで堅い物言いしかしなかった黒いドラゴン、黒耀の変わり様に皆が驚いていた。
「って言うか…むしろ驚くほど変わったのは黒耀じゃない方よねぇ。」
辰美がそう言って笑うと幸也が意味ありげに笑った。
「麗ちゃんは小さい頃は素直で可愛かったよ?その頃に戻ったみたいだ。」
「…そうかー、小さい頃は…って、幼馴染だったんだっけ…」
今更ながらに驚く、麗華と幸也の繋がり。そしてオカルトとミステリーの繋がり。世の中には相反するようで繋がっている世界があるのだなと辰美は思った。そんな少し大人びた辰美の横顔を見ながら幸也は小さく、
(黒耀のせいだけじゃないと思うけどね。)
と、心の中で呟いた。




