邂逅
「後でどういうことなのか説明してもらうわよ。」
「あんたなら大体察しはついてるんじゃないの?」
「あいつが犯人の一人。」
「大正解。」
辰美と麗華は走りながら話していた。
「あいつがオレに毒を飲ませたんだよ!辰美のおかげで見えたんだ。」
飛びながら翡翠も言う。
「で?竜たちはどこにいるの?」
「分からないわよ。」
麗華にそういわれ、全員が立ち止まった。
「何それ?!分からないまま走ってたって言うの?」
「仕方ないじゃない!今はとにかくあいつから遠ざかるのが先だと思って!」
「それはそうだけど闇雲に走ってたってこっちの…体力が…」
そこまで言って麗華の腕から血が流れていることに初めて気がついた。
「ちょ、あんたこのままで…」
「だからとにかくあいつから遠ざかるのが」
「馬鹿!」
辰美はそう叫んで自分のハンカチを取り出すと麗華の血を丁寧に拭いた。
「翡翠、これ、治せるわよね?」
「うん!」
翡翠と辰美はすぅっと息を吸うと、合わせて麗華の傷口へ吹きかけた。額の目が淡いグリーンに輝いている。
「…そんなこと、どこで覚えたのよ。」
「なんとなく、かな。翡翠と意識をあわせると色んなものが見えてくるの。」
「ふうん。何だかうらやましいわね。」
「私は麗華がうらやましいわ。」
辰美はそう言って笑った。
「白状しちゃうと、今回の件、私なんかいらないんじゃないかって何度も思った。」
「そんなこと、」
「麗華、何でも出来るし、知ってるし、ぐいぐい皆を引っ張っていくし。」
そう、辰美が言う頃には麗華の傷は綺麗に治っていた。
「私の存在意義は今だって翡翠に支えられてる。」
そう言って辰美は翡翠を抱きしめた。
「あの時、ジェイの言いつけを守って翡翠を起こさないようなあんただったら事件は解決できなかったかもよ?」
「そんな辰美だからオレは選んだんだ!」
翡翠も大いばりで言う。
「ありがとう。」
辰美がそう言うと麗華も自分の腕に触れて
「私の方こそありがとう。」
と、言って照れたように笑った。ちらりと見えた前髪の下、辰美は初めて麗華の瞳を僅かに見た。もしかしたら、麗華は本当はとても綺麗なんじゃないかと辰美は思った。
「そなたら、稀なる輝きを持っているのぅ。」
しわがれた声に振り向くとそこには小さな光がぽつんとあった。
ランタンだ。そしてそれはするすると闇から抜け出るように前に出てきた。
そこにはランタンを掲げた小さな一匹のドラゴンが居た。
「能力を行使しているドラゴンがいるようじゃったでな。見に来たのじゃよ。」
長い髭を蓄え、歩き方もゆったりとした、見るからに年老いているであろう茶色の小さなドラゴンは穏やかに話した。
「あの、私達、この山に集まっているドラゴン達に会いたいんです。」
麗華は警戒しながら、それでも辰美と翡翠を庇うように一歩前へ出た。
「ふむ。」
「この子、この子が無実なの!」
「辰美、落ち着きなさい。」
先ほどまでの可愛げはどこへやったのか、もういつもの麗華に戻っていた。
「その必要はない。」
老いたドラゴンは目を閉じてそう言った。何故?と聞き返そうとした麗華はただならぬ気配を感じた。
何かが聞こえたわけではない。静かだ。何も聞こえない。何か変化が見えたわけではない。だが、魔法は確かにそこに行使され、彼女達はいつのまにか大勢のドラゴン達の輪の真ん中に居た。




