作戦会議
「それでは、事の次第を時系列順にまとめて行きましょう。」
大きなホワイトボードを背に立っているのはジェイだが後ろでまとめているのは幸也である。前の席に座っているのは麗華と辰美。辰美の膝の上には翡翠がちょこんと座っていた。
ホワイトボードの内容をまとめるとこうだ。
事件の発端は名付けの儀式の前夜、翡翠が毒の炎を吐き、姫君が重体になったこと。そして国的な判断としては翡翠がラグーン王国への反乱を起こし、王家の人間の殺害を図った。だが、それが失敗に終わり、翡翠は世界の壁に穴を開けて逃亡。目下、国中の探偵が翡翠を追っている。
「これって、もし翡翠を捕まえたとして、王国側はどうするつもりでいるの?」
辰美が聞いた。翡翠は無実の罪を問われているのでぶすっとしている。それを辰美は宥めるように何度も頭を撫でていた。
「現段階では何とも言えません。危険なのはその毒に、毒を吐いたドラゴンの肝が効くという噂がまことしやかに流れているところです。」
そこまで言うと翡翠は怯えて辰美に抱きついた。
「何それ!ひどい!」
辰美は翡翠を抱きしめた。
「落ち着きなさいって。ジェイが狙ってるわけじゃないわ。」
麗華が静かに言った。
「もちろんです。ですが、そんな噂が流れている以上、このまま帰るのは危険なのです。」
「他はともかく、王家の人間の考えも聞いておきたいところだよね。裁判とかそういう制度は在るの?」
ジェイの後ろで書記の役割をしながら幸也が聞いた。
「裁判の制度はありますが、こちらほど整ったものではありません。そして竜がその裁判に関わった前例はないのです。」
「つまり、今回がすべてにおいて最初のケースってことね。」
麗華が付け足した。
「だから、何が起こるのかわからないのです。」
「ラグーン王国は今、ドラゴン達が仲間を案じて集まってるのよね?」
「ええ、一部の竜ですが。人の元に残っているものも居ます。多くは子供ですね。」
「その、ドラゴン達の所へは行けないの?まずドラゴン達に真実を伝えたらどうかなぁ。」
「それはいいかもしれませんね。彼らは基本理性的で温厚ですから。」
「私もそれには賛成するわ。」
「麗ちゃんはドラゴンを見てみたいって気持ちもあるよねぇ。」
「悪い?」
きっと麗華が幸也をにらんだ。
「竜よ!ドラゴンよ!それをこの目で見られるなんて最高のステイタス!」
ここ最近の冷静な推理のおかげですっかり忘れていたが麗華は基本オカルトマニアである。もはや口から火を吹きかねない勢いで竜の魅力について語り始めてしまった。
「と、とりあえず麗ちゃんは放っておこうか…」
幸也が話を前に進めた。
「それで、この間違った筋書きに対抗できるような話って無いかな?翡翠君は何か覚えてない?」
幸也が問いかけると翡翠は首を横に振った。
「オレ、覚えてないんだ。何だか頭がぼんやりしてて…」
「あたし、知ってる。夢で見たよ?」
辰美があっさりそう言うと全員の視線が辰美に集まった。
「え?」
逆に辰美がその真剣な眼差しに気おされてしまった。




