暗躍
「うっそ。ドラゴンってそんな風に生まれるの?」
「うん。だから特に親とか子供とかって感覚は無いよ?」
「そうなんだー。あ、翡翠、みかんもう一個食べる?」
「食べるー。」
「じゃあ剥くねー。」
「あのー…すみません。この状況を説明してもらって良いでしょうか…」
「あ。」
二人の余りにも緊張感を削ぐ会話に戻って早々ジェイは自分の世界の決意を投げ出したい気分になった。
暗い、部屋だった。ただ、今日は窓を開け放しているため、空気は良かった。
そして、月が昇っていた。
満月だった。
明かりの全く無い部屋の中に浩々と月明かりが差し込んでいる。一人の男がベランダに出ていた。月明かりの中、満月を見上げ、何かを思っている。何を思っているかは推し量れないが、その横顔は決意に満ちていた。
「ことは順調に運んでいるようですね。」
男に何者かが声をかけた。月明かりと、部屋の闇の境界線上に一対の靴が見える。
「当のドラゴンが見つからねば、ことは進まぬ。」
「逃げられてしまったのは誤算でしたね。あの時そのまま切って捨てるべきでした。」
「そうなれば今頃はこの国は火の海だな。」
「無血開城の道もあるでしょう。その時はわがソウ国の旗がここに翻っているでしょうね。」
「賢明な王は戦う道は選ぶまい。」
「我々としても犠牲は少ないに限りますよ。攻城となれば勝ち戦でも損害は大きい。」
「今、国中の探偵共が血眼になって他世界に逃げた竜を追っている。」
「時間の問題、ですか。それにしても早くして欲しいですね。」
「一度亀裂が生じたものを修復するのは難しい。時間が経てば経つほど焦れる者が出る。」
「こちらとしてもそうは待てませんよ?」
「分かっている。」
背後の男の気配が消えた。
ベランダに残された男は再び静かに目を閉じた。想いを新たにするために。




