報告
探偵協会の協会長は年の頃四十半ばと見られる落ち着いた男だった。ギルバート・フラウ。通称ギル。彼は難しい顔をして探偵たちの報告書を読んでいた。今のところ誰一人としてドラゴンを見つけたものはいなかった。
「協会長。」
ジェイはノックをして部屋へ入った。
「おお。ジェイか。首尾はどうだ。」
ジェイはギル協会長の甥っ子に当たった。その分の欲目は無いが多少の無理は利かせられそうだった。
「おじさん。いえ、協会長。お願いがあります。まだ、可能性の段階なのですが…」
「何だ。」
「別の世界の人間を、この世界に連れてきたいのです。真実の、追究のために。」
ギルは暫し黙った。出来ないことではないが、果たしてその干渉が今後の障害にならないか。
「信頼できる相手か?」
「私は、そう、思います。」
「長くはいられないぞ。その間に事件を解決できる確証はあるのか?」
「それは…」
ジェイは口篭った。
「全力を尽くしますとしか言えません。」
ジェイは真っ直ぐにギルを見た。ギルは難しい顔をしている。正直、今の段階で光明は見えなかった。可能性に賭けることも必要になる段階だ。
「私が一番弱気なのかもしれないが…」
ギルは小さく零してジェイに銀色のバッジを三つ、渡した。
「今渡せるのはそれだけだ。足りるか?」
「示し合わせたような数です。彼らはこの世界に呼ばれているのかもしれません。」
この世界自体が、解決を望んで他の世界からの客人を欲している。そうなのかもしれない。それならば、その流れに任せてみるもの悪くは無いのではないか。ギルはそう思った。
「協会長。ドラゴン達はどうしていますか?」
ジェイが銀バッジを握りながら言った。
「彼らは北の山に集まっている。彼らも我等との生き方を考え直しているのかもしれない。」
「ラグーン王国の国防は、今となってはドラゴン頼みになりつつあります。特に北方のソウ国との間が冷戦状態の今、彼らの守りが無くなれば…」
「危険極まりないな…」
二人は暫し、考え込んだ。
「ジェイ。」
「はい。」
「頼むぞ。」
「分かりました。」
ジェイはその手に握る銀バッジに祈りを込めるようにキスをしてその場から去った。




