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禁忌
目が覚めると辰美は泣いていた。何故かひどく哀しい気分だった。哀しいだけではない。悔しかった。辰美は涙を拭いた。
その視線の先にあの水晶球見えた。ジェイは一度ラグーンへ帰るといって何故かこの水晶玉を置いていった。
絶対に触らないようにと何故か何度も念を押して。
仄かに光る水晶玉の中で緑色のドラゴンが眠っている。
なぜだろう。辰美にはひどくそのドラゴンが懐かしく感じられた。そのドラゴンの目尻に光るものがあった。泣いていたのだろうか。ドラゴンも?辰美と同じように。
ジェイから聞いた話だけではこのドラゴンは一国の姫君を殺そうとした張本人だ。
「毒の…煙…」
辰美はふと思い当たった。夢の内容と、ジェイから聞いた話が断片的に一致する。だが、断片的に違う。
(この件には裏があると思うんですよ。)
ジェイの言葉が辰美の脳裏に浮かんだ。あると思う、ではない。あるのだ。確かに。記憶と証言との違いはそれを裏付ける。
「でも、それは私の見てる夢がこの子の記憶であるってことになるのよね。」
麗華であるなら、その判断はできそうだとふと、辰美は思った。だが、その思いは麗華の人を馬鹿にしたようなため息にかき消された。
「かくなる上は…」
辰美はそっと水晶玉に手を伸ばした。




