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チワワに転生した俺がラブリーチートで異世界を救い始めている件。【短編版】

作者: 星里有乃


 むかしむかし、あるところに1人のオタクの若者がおったそうな。


 オタクはアニメとネトゲが大好きで毎日ネトゲにログインするかたわら同人誌を読み漁ったり、ブルーレイを鑑賞したり、萌えフィギュアを集めたり非常にオタ充な生活をしておった。

 同人誌即売会に向かう途中で可愛いチワワが軽トラックに轢かれそうになっているのを目撃したオタクは、普段はチワワになんか興味がなかったのに思わず助けに飛び込んでしまったのじゃ。


 犬の神様「おお、オタクよ。チワワの命を救う代わりにそなたが死んでしまうとは……。そなたを異世界に転生させ、チワワとしてあらたな犬生を与えてしんぜよう!」


 犬生って何?

 人生じゃないの?


 オタクがそういうことを考えていると、あっという間に異世界転生し、オタクは気がつくと異世界のペットショップにおったのじゃ。




『キャンキャン!』

『にゃあん!』

『わんわん!』

『クウーン!』



 子犬や子猫たちの愛くるしい鳴き声に目を覚ますと、そこは異世界のショッピングモール内のペットショップだった。


 何故異世界だと気づいたかというと……。

 歩いているお客さん達がみんな魔族やダークエルフなどのゲームでよく見かるビジュアルなのと、そこのペットショップの子犬達は、頭が三頭のケルベロスを筆頭に神話やファンタジーRPGに登場するような子犬や子猫達だったからだ。

 だが、オレの姿はノーマルなチワワである。せっかく異世界に来たのに意外と普通の犬に転生したな……まあ可愛いが。


 チワワとは、みなさんご存知の愛くるしい小型犬で、古くはテチチという名で呼ばれており、かの古代文明で生息していたと伝えられている。

 性格は、小柄な容姿にもかかわらず意外と勇敢であるが、体力が低いため飼い主は寒い日に衣服を着用させるなど細心の注意を払う必要がある。

 チワワと言っても様々な種類のチワワ種がいるが、おそらく毛の長いタイプのロングコートチワワというものだ。


 クリクリの大きな瞳。

 細い手足。

 大きな耳。

 ベージュの長い毛並み。

 ペットショップのガラスに映るオレの姿は、どこからどう見てもラブリーなチワワだった。


 どうやらモールに遊びに来ているお客様を和ませるのも、オレ達小動物の役割らしい。

 店内は、仔犬や仔猫を広いスペースで自由に遊ばせて、ガラス越しにオレ達小動物の様子をお客様に見てもらう仕組みになっている。

 自由きままに遊ぶ動物達の姿を見せて、癒し効果を狙っているのだ。

 そして、気に入ってもらえれば飼ってもらえる可能性も……。


 すると、モール内で突然お客様達がザワザワし始めた。

 魔族が皆ひれ伏し始める。

 お揃いの黒いローブを着た魔族達が、紫や青の花を周囲に撒き散らす作業をしながら道を開けさせていて、床の上はすでに花の絨毯状態だ。

 一体なんだろう?


「あっ! 魔王様だ!」

 ケルベロスの子犬がハモりながら喋った。


 やって来たのは魔王様御一行のようだ。 この異世界、魔王が健在なのか……。


 魔王様は銀髪ロン毛黒衣のいかにもな風貌で赤い目をギラつかせているイケメンだ。 だがよく見ると若いわけではなく、それなりに結構いい年のようだ。魔王様の隣には、10歳くらいの銀髪ロングヘアの美少女が黒いゴスロリワンピースをヒラヒラさせながら子犬や子猫を見て喜んでいる。


「魔王様、ボク達を番犬にしてくれないかなあ」


 どうやら、ケルベロスの子犬は魔王様に飼われたいらしい。尻尾をフリフリしながら、魔王様に向かってガラス越しにクンクンアピールし始めた。

 ケルベロス達が魔王様の足取りを追って移動する。魔王様にアピールが通じたのか少しケルベロス達を気にし始めたようだ。


 すると、魔王様は美少女を連れて子犬コーナーの係の人に近づいていき……。

「ケルベロスを見たいのだが……」

 良かったなケルベロス、魔王様に選んでもらえて。魔王様はケルベロスを抱っこして、いろいろ確認しているようだ。まだ子犬だし育て甲斐があるだろう。


 魔王様のペットはケルベロスで確定、誰もがそう思ったその時だった。


「ねえ、パパ! この子可愛いよ! このチワワ買ってよお!」

 そう言って、魔族の美少女が指さしたのはロングコートチワワのオレだった。

「……魔族はこれから人間界と戦争するんだ……そんな戦力にならなそうなチワワなんて……」


 魔王様とオレの目があった。

 ギラギラした赤い瞳に見つめられてビックリしたオレは小さく震えながら、チワワ特有のウルウルした瞳で見つめ返すしかなかった。


「……チワワなんて……」


 その瞬間だった。

 オレの弱々しいチワワのカラダから、まばゆいばかりの愛くるしいオーラが発生し、魔王様のハートに直撃したのである。

 後で知るのだが、このチワワ族特有のチートパワーを『ラブリーチート』と呼ぶそうだ。


「……チワワ……」


 魔王様が言葉に詰まる……。

 チワワオーラがハートに直撃したせいなのか胸が苦しいようで胸を押さえ始めた。これは一体……。


「ねえパパ! 戦争なんかやめて一緒にお城でチワワ飼おうよ! 今時人間界と戦うのなんて流行らないよ! 時代はモンスターバトル大会なんだよ。パパちょっと古いんだよ」


 古い、流行らない。

 可愛い娘にそう言われたのがショックなのかそれとも……。


「それに人間の勇者がお城に来たらみんなやられちゃうよ。私まだチワワ飼ったことないのに‼︎」

 チワワを飼いたい一心で、父親を説得する娘。


「そのチワワ見せてもらおうか……」

 オレは、店員のお姉さんに抱きかかえられて魔王の娘にモフモフと触られた。

「可愛いー! この子の名前何がいいかなあ?」

 娘がエンジェルチワワだのプリティチワワだの名前を考えていると魔王様が一言……。


「ハチ……そのチワワの名前はハチだ」

 柴犬でもないのに、チワワのオレをハチと名付ける魔王様。


 えっ? 名付けたということは……。


 黒いローブを着た側近の1人が、チワワを飼おうとする魔王様を止める。

「魔王様……お言葉ですが、そのようなチワワを飼われましてもすぐに人間界との戦争で……」

 か弱いチワワは死ぬ……と、側近は言いたいのだろう。


「だから戦争は取りやめだ……流行らないと娘に言われた……時代遅れな王に民はついてこない……それに……」


 魔王様はオレを抱き上げた。魔王様の赤い目とオレの潤んだ目が再び合う。


「このチワワ……可愛いしな……」


「わーい! パパ大好き!」

 娘は大喜びだ。




 そんなわけで、チワワに異世界転生したオタクの若者は番犬ケルベロスとともに魔王城で飼われることになったのじゃ。

 このチワワは異世界の戦争を止めたチワワという伝説を打ち立てた。

 その後もラブリーチートでこの異世界を救うことになるのだがそれはまた別のお話じゃ。


 では、この話の続きはいつかまた……。



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― 新着の感想 ―
[一言] ケルベロスもポイされないで、ちゃんと番犬にされてよかったです!
[一言] 初めまして、こんばんは。 チワワの可愛さは最強だったんですね! 物語を楽しませて頂きました。 ありがとうございます。
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