ぷろろーぐ3
聖魔の世界と接するもうひとつの世界がある。その世界では、聖光や闇魔を利用した魔法(一部の聖職者は『奇跡』と呼ぶらしい)が発展している。そして魔法が苦手な人間は『落ちこぼれ』などと呼ばれ、蔑まれる。魔法・奇跡研究学院高等科に在籍している、一年B組、奥村栄太もそんな魔法が苦手な・・いや、使えない人間だった。
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保健室
そこには白衣を着た女性とブレザータイプの制服を着た少年、奥村栄太がいた。
「う~む・・・何度計っても聖光も闇魔も計測されん。君は本当に人間なのかね?」
「・・・人間だと、思うんですがね~。」
「ふむ、どうにかできないものか・・・。そうだ!確か五月の半ばに使い魔の召喚があっただろう?」
「はい、明日ですね。というか召喚に必要な魔力が本当にないのか調べに来たんですが」
「悪いが魔力を使っての召喚はあきらめてもらうしかないな。」
「・・・はぁ。そうですか、わかりました。」
「待て待て。魔力を使っての、といっただろう?魔力を使わない方法もある。」
「そんな方法があるんですか!?」
「ああ。いいか・・・」
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高等科校舎裏広場
「キターーーーーー!!!!俺サラマンダーだ!!」
「いいなぁ~」
男女の生徒がそれぞれの使い魔を召喚している。炎でできたトカゲであったりモグラやコウモリ、トリ、オオカミなどさまざまな生きものが次々に召喚されている。その様子を栄太は憂鬱な気持ちで見ながら近づいていく。
『ま~た馬鹿にされるんだろうな・・・。』
空いている召喚陣に着くと後ろから肩を叩かれた。
「よう、落ちこぼれ。お前何しに来たんだ?」
「何って召喚にきまってんだろうが。お前こそなんのようだ、宇治村。」
言い返した栄太を蔑みながらハッと鼻で少年・・・宇治村は笑う。
「な~に。俺のこのサラマンダーちゃんとお前の使い魔で勝負しようってだけだ。どうせお前は雑魚しか呼び出せないんだから、この俺が相手してやることをありがたく思え。」
「・・・・・・・・・はぁ。」
いろいろとわめき立てているのを無視して保健室の先生に言われたとおりに栄太は準備を始める。
「・・・何してんだ?早く召喚しろよ。」
「宇治村。俺は普通の方法では召喚できないらしい。」
「はぁ?どういうことだ?」
「保健室の先生に調べてもらったんだが、聖光や闇魔がまったく俺にはないらしい。」
「そんなわけねぇだろ。生きとし生けるものにはすべて聖か魔が宿ってるはずだ。」
「だが検査してなかったんだ。しょうがないから、魔力を使わずに召喚する方法を教えてもらってきた。」
そういって栄太は用意していたナイフで自分の左手を切り裂く。
「おいっ!?何してんだ!自傷行為なんてするんじゃねぇ!!」
「・・・お前って落ちこぼれとか言ってくるくせになんだかんだで優しいよな。」
一瞬のちに血がたら~と出始め、ボタボタと落ちていく。そしてその血は召喚陣を赤く染め上げる。すると召喚陣が赤く光り始めた・・・
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聖魔王さん家
その日聖魔王と光の勇者と魔王は安らかに過ごしていた。光の勇者と魔王は中が悪いわけではないのだ、決して。だが光の勇者の中では(おやつ≫魔王)で、魔王は気になるあの子にちょっかいかける、そんなこんなで喧嘩(殺し合い)が起こるのだ。とにかく、その日は平和だった。
「魔王~。醤油とって~。」
「ほらよ。あ、山葵とってくれ。」
「はい。・・・モグモグ、聖魔王様ご飯おかわり~」
「俺もおかわり~」
「まだまだあるからいっぱい食えよ~」
本当に平和である。
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家の外
ピキッピキピキッ!パキンッ、コォォオオオオ!!!
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「今、変な音がしたようなって何よあれ!!??」
「・・・(あんぐり)」
「空間が割れているのか。どんどん吸い込まれていくな。」
「そんなこと言ってる場合!?私たちも吸い込まれてるわよ?」
「ま、まぁなんとかなるだろ。」
「声が震えてるわよ」
「ま、まぁなんとかなるだろ(棒」
「お願いだからちゃんとしゃべって聖魔王様ってキャァァアアアアアアアア!!!!」
「ギャァァァァァアアアアアアアアア!!!!」
「あはははははあははははっ!!!!」
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