ぷろろーぐ2
聖魔王。それは聖と魔、つまり世界の聖魔のバランスを司る者。いつ生まれたのかは誰も知らない。誰よりも早く生まれたから。聖に属するものは『聖光』の力を持ち、魔に属するものは『闇魔』の力を持つ。どちらにも属さない存在は二つ。一つは人間だ。といっても属さないというよりは、コロコロと聖になったり魔になったりするだけなので、人間全体としてはどちらにも属さないが個人個人をみれば、どちらかに分かれている。そしてもう一つが聖魔王だ。聖魔王は『聖魔』の力を持つ。聖魔の力はありとあらゆる存在の弱点となる。簡単にいえば、それがどんなものであろうと、触れたら消えたり壊れたりする(聖魔王の意思である程度は制御できるらしい)。若干チートくさいがそれぐらいの力がなければ世界のバランスを司るなどできないのだ。
**********
今日も今日とて光の勇者と魔王は喧嘩(殺し合い)をしていた。
「魔王ォォォオオオオオ!!!!!!!私の『馬韮あいす~期間限定韮三倍~』食っただろぉぉぉおおおおお!!!!!!!!!」
「やはりお前か光の勇者・・・・・・っ!!あんなもの食ったせいで俺の腹は(ピーーーーーー)なことになってんだぞ!?一体全体どうしてくれる!!!!」
ガキンガキン、ガガガガガガガガガガガガガ、ドガシャァァアアアアア!!!!
≪勇者たちの家≫
家の中では、雪のような白銀の短い髪に燃えるような赤い瞳の男が、鼻歌を歌いながらクッキーを焼いていた。
(どうせあいつら、またおやつのことで喧嘩しているんだろうなぁ)
人間から、いや大多数の存在からすれば光の勇者と魔王が戦っている状態はドキドキハラハラなことであり、喧嘩などという言葉で収まるものではないだろう。
チーン
「お、クッキー焼けたか。どれどれ」
彼がオーブンを開けてクッキーの焼け具合を確認している、その時、
ドガシャァァアアアアア!!!!
家の壁を突き破って岩やら何やらが飛んできた。それはちょうど、彼の目の前を通っていた。焼けたクッキーを道連れにしながら。
「・・・・・・。・・・・・・・・・・・・。」
**********
光の勇者と魔王は周囲のことなど気にもかけずに喧嘩(殺し合い)をしていた。
「お前はいつもいつも私のおやつォォォォオオオオオ!!!!!!!!」
「あんなところに置いておくのが悪いんだろうが!!あんなもの『食ってください』っていってるようなもんだろ!!!!!」
ガガガガガガガガガガガッキィン!!
夢中になっているそのとき。
「いい加減あきらめ、ブホォッ!!!????」
「あきらめ、アイスっ!!??」
突如として二人の体が横からの衝撃で吹き飛ぶ。
「いったい何が・・・げっ聖魔の」
「いたたたた・・・・ひぃ!王様ァ!」
二人が見たものは一人の阿修羅と化した先ほどの男である。
「なぁ、お前ら。」
「「はいっ!」」
「何回周りのことを考えろっていった?もう俺は覚えてないぞ?言い過ぎて。何だ?この周りの状況。地盤まで崩壊させてからに。やっぱお前らは言葉ではそのちっぽけな脳みそに刻みつけることができないのか?そうかそうだよな。俺が馬鹿だったな。だから今日は違う話し方をしようと思うんだ。」
「違う・・」
「話し方・・・?」
「ああ。」
______肉体言語だ。
「逃げるが勝ち!」
「あ、てめ勇者ァ!!!俺も逃げる!!」
「逃がすと思うか?」
男の正体は先ほど説明した、聖魔王である。聖魔のバランスを司るということは光の勇者または魔王に力が偏った場合、圧倒的な力で押さえつけるということだ。つまり・・・・・・
「げっ!!もう来た!!」
「聖光でどうにかできないのかよ!!!!」
「『聖魔』に聞くわけないでしょ!?闇魔こそテレポート的な何かないの!?」
「そんな都合のいいものがあるわけねぇだろ!!」
ガシッ×2
「逃げられると思ったか・・・?」
聖魔王様から逃げられるものはいない。
ご意見ご感想はありがたくいただきます。