9話 奴隷
暗い。
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重い。
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(……どこだ)
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意識が浮かぶ。
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体が動かない。
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固い。
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締め付けられている。
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(……縛られてる)
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手を動かそうとする。
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動かない。
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力が入らない。
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(……くそ)
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ゆっくりと目を開ける。
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視界が揺れる。
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木の天井。
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きしむ音。
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(……中か)
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鼻に入る匂い。
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汗。
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血。
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獣。
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混ざっている。
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(……嫌な匂いだ)
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■ 状況
トールは横になっている。
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縄。
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手。
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足。
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きつく縛られている。
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逃げられない。
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(……捕まった)
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思い出す。
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森。
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戦い。
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バラガン。
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「——生きろ」
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胸が締め付けられる。
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(……バラガン)
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だが——
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止まらない。
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(……生きる)
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それだけ。
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■ 周囲
横を見る。
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人。
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何人もいる。
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同じように縛られている。
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男。
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女。
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子供。
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怯えている。
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痩せている。
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(……奴隷)
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理解する。
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ここは——
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“そういう場所”だ。
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■ 体の状態
体を動かそうとする。
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ズキッ。
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痛み。
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息が浅い。
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力が入らない。
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(……動けない)
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限界に近い。
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■ 野盗
「起きたか」
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低い声。
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前を見る。
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男。
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汚れた鎧。
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笑っている。
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トールは睨む。
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何も言わない。
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男が笑う。
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「いい目してるな」
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近づく。
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しゃがむ。
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「こいつは当たりだな」
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別の男が来る。
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トールを見る。
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「ガキにしては体つきがいい」
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「売れるぞ」
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笑う。
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トールは動かない。
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(……今は耐える)
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■ 会話
「どこに流す?」
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「いつもの市だろ」
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「数もいるし、まとめて出すか」
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「今日は客も多いらしいぞ」
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笑い声。
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トールは目を閉じる。
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(……売られる)
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それだけは、分かる。
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■ 無力
縄を引く。
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動かない。
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歯を食いしばる。
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(……くそ)
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何もできない。
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戦えない。
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逃げられない。
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(……弱い)
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それだけが残る。
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■ 夜
馬車が止まる。
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外が騒がしい。
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声。
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人の気配。
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「着いたぞ」
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「降ろせ」
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乱暴に引きずられる。
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地面。
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冷たい。
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トールは顔を上げる。
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光。
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明るい。
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人。
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多い。
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ざわめき。
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視線。
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(……ここが)
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「奴隷市だ」
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男が言う。
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■ 始まり
トールは地面に転がされる。
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何もできない。
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ただ——
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見ている。
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売られていく人間。
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値をつけられる。
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選ばれる。
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(……ここからか)
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終わりじゃない。
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ここから——
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始まる。
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トールは目を閉じる。
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そして——
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次に目を開けた時。
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“誰か”が立っている。




