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夕焼けのカフェ

作者: ゆきの暴威
掲載日:2026/03/09

[ここは見渡す限り、一面の原っぱ。そこに一軒のカフェがポツンと佇んでいる。その傍に、一人の男がいた。18歳。]


やあ、君も来たんだね。ここから見える夕焼けは世界一綺麗なんだ。


何よ。私はわざわざ仕事を急いで終えてきたんだからね。あなたとは違って忙しいのよ。


ははは。そうさ、僕はただここで歌っているだけさ。


相変わらずお金ないんでしょ。


いや、ポケットの中には……ははは、あんまりないや。でも君と電話できるくらいのお金なら持っているよ。


いつもそうね。明日はそのお金じゃ暮らしていけないでしょ。


いいんだよ。サクセスを夢見ているだけで一日が終わる。ワクワクするだけで僕は満足さ。


ちょっと待って、ポケベルが鳴った。出るね。


……君はいつも忙しそうだね。そんなに急いで生きて楽しいのかい。聞こえないか。僕はもう少し、確かなものを探しているよ。


[男はその場を離れて、カフェに向かって歩き出した。陽気なひとりぼっち。]


僕はいつも夢を見ている。夢を失ったらすべてが終わるような気がして。じゃあまたマスターに夢を語りに行こうかな。


カランコロン。


[店内にはカウンターに初老の男が一人いた。若い娘の写真をまじまじと見つめている]


やあ、マスター。


夕焼けはもう終わったようだね。どうしたんだいスナフキン。


いいこと思いついたんだ。夜更けにこの原っぱで集まって踊る会をしてみてはどうだろう。


踊って何になるんだい。


そこさ。意味がないんだ。でもなにか楽しくなってこないかい。意味がなく集まって踊るんだよ。


スナフキンはいつも心が富んでいるね。


いいや、いつだって満足じゃないよ。


お金がないのにとんだ資産家だ。そういえばあの子は?


これから来ると思うよ。


カランコロン。


ほら来た。


ちょっと、なんで先に行くのよ。わざわざ呼び出しといて。


ははは。


マスター聞いてよ。今日も帰る間近に会社に電話掛けてきたのよ。公衆電話から。


そりゃびっくりするね。


そうよ、急な仕事だったらどうするのよ。残業よ。


ははは。


ここに来るのも飛ばしてきたんだからね。


そのバイク、もうずいぶん馴染んできたね。僕もいつか乗ってみたいよ。


何言ってるのよ。マスター、いつもの。二つね。


ありがとう恵美さん。


どうせお金ないんでしょ。


君に電話をかける分は残しているよ。


ふふふ、君たちが来てくれるからお店が賑やかだよ。


今日も誰も来ないでしょ。


そうだろうねえ。


こらっ。マスター、なんでこのお店やっているの?


そうだねえ。きっと私もスナフキンと一緒で、夢を見ているからだよ。いつか戻ってくるかもしれない娘に、ここにいるよと目印になるように。




じゃあ、将棋でもしようか。


あんたからでいいわよ、『スナフキン』。


▲6八飛


いきなり四間飛車って何やってんの?△3四歩


いいんだ。▲7六歩


変なの。△8四歩


▲2二角成


ちょっと、何やってんのよ。△同銀


▲8八銀


へへっ、将棋は楽しいなあ。いつだって夢を見ていられるんだから。


振り飛車が自分から角交換するなんて……信じられない。


スナフキンは自由だねえ。どうしてそんなことを思いつくんだい?


いっぱい楽しいことを考えているからかな。


まったく、お金ないのに心だけ膨大ね。


瘦せっぽちの心じゃ君を抱けないよ。


……バカね。小説家になれるまで暇じゃないからね。



さて、今日も店が閉まるまで、楽しもうか。ホオーウ、ホオオオオオ。


マスターったら、また歌いだした。


僕も歌おうかな。ホオオオオオ。


ふふっ。永遠は心の中、ってね。


ん?

いま窓の向こうに女性がいた気がするけど……

まあいいか。


[ここは一面の原っぱ。そこに一軒のカフェがポツンと佇んでいる。そこには確かなものをつかむため、夢を見る者達が集まる。]

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