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35 ようやく本来のライト工房へ

俺は本店であるライト工房をレッツ共和国の支店に売り払った。どちらも所有者は自分なので、実質は変わらない。税の支払先が王国からレッツ共和国に変わっただけだ。むしろ、共和国の方が税金は安い。


関係者の皆さんには迷惑をかけたが銀行システムを作ったので、現在の方が便利になったので好評だ。業者間での支払いを纏めて行えるようになって手形を発行できるし、大金を持って移動する必要がない。この世界に銀行を導入してよいのかと迷ったが、大切な人とライト工房を守るためにも必要だと割り切った。


チルノさんとスターランス商会に多大な迷惑をかけたけれど、その分は給料も増やし、実家の商売も大きくなるので許して貰おうとしたら、「こんな巨大商社どうしたらいいの……ますます忙しくなっちゃう」と嘆かれた。申し訳ない。


ちなみにチルノさんよ。この銀行には審査に通った商人や投資をしたい貴族も、どんどん入会してくる。というわけで巨額資金が流れ込み、さらに大きくなる。申し訳ない。

だって、この銀行部門大発展する予定だ。

なぜなら、銀行部門の長はケイン殿下だから。

前々から経済に聡い方だと思っていたが、秘密であるスキルを明かしてくれた。

「天経済民」、あれはやばい。良く治め民を救い富ませる。天の付くウルトラレアスキルだ。

最初は王族が参加していいのかと戸惑っていたが、自身とリーゼを守るためには力がいると覚悟を決めてくれた。

派閥や政治に関わることにも、腹をくくってもらった。やるからには全力で行くことを。王国の金融を牛耳るつもりでやってもらう。


そんな、ケイン殿下はうちの従業員ってことになる。

おかげで経済で天下統一できそうだ。

ケイン殿下が遠慮していた政治力の発揮と宮廷内外の人脈がレッツライト商社とつながったので、さらに魔道具製造や開発力が上がったのもヤバい。

チルノさん、ほんとごめん。


デロス王子の勢力は減った。

うちの魔道具製造に携わっている製造や流通業者で後盾の貴族達の関連業者とは、契約を更新しなかった。原料の仕入れ先もだ。

ライト工房は武器は作っていないが、兵站用の魔道具は関連業者が製造販売している。それが途絶えれば、便利な魔道具が使えなくなり、兵達の不満は領主達に向かった。

領民の人達の生活に必要な魔道具は流通しているが、デロス派の商人ではなく、別ルートで販売している。


俺が思っていたよりもライト工房の魔道具は世間に浸透していて、ライト商社の商売は巨大な経済圏となっていた。そこからデロス派閥の貴族達を切り離したわけだ。

王国は王国法があるものの、各領主の権限は強い。その基は領地の人口と税収だ。税収減は大打撃となる。私兵達の士気も重要だ。

結果として多くのデロス派の貴族が「中立のケイン殿下」派にも(・・)変わった。


ケイン殿下は「王位などとんでもない。皇族臣下として、王国の経済を発展させ、王国民の生活を豊かにすることに専念したい」と公言してきた。

そのため、デロス派閥の貴族達も「王国の経済発展と民の豊かさのために」という名目で、ケイン殿下派に入りやすい。あくまでも、王にはデロス王子を応援しまてますよ、と言い訳も出来るからだ。むしろ、ケイン殿下に寄ってくる貴族達にも、レッツライト商社との取引を再開したい人達にも、積極的にこの言い訳を使うように仕向けた。


ゲベッグ家で培った経験を、貴族的な交渉術をフルに駆使して、デロス王子派の多くを「デロス王子を支持するけれど、ケイン殿下に敵対は良くない」貴族にした。

もちろん、生粋のデロス王子支持貴族には、うちの経済圏に入らずともやっていける大貴族も居るが、勢力を大きく削ったことになる。


一風変わった天下三分の計という感じだろうか。

デロス王子が王になっても、経済的にはケイン殿下の力は強く、ゾロク殿下の派閥も存在する。

ゾロク第一王子が王位継承に後ろ向きだから、デロス王子の戴冠への優位は変わらないが、敵対する動きは封じた。


それでも王位を継いで余計なちょっかいをかけてくるなら、経済戦でブレイズ王朝にダメージを与えて、貴族位など捨てて国外に行こうと思う。


その時にはリーゼ殿下――助けた褒美として公の場でも愛称で呼ぶこと、さすがに殿下を付けてだけど許可された。を連れて行きたい。無理かもしれないが、もしそうなったら国外で粗末な暮らしをして頂くつもりはない。その為にも、俺はこれからもレッツライト商社を大きくする。

チルノさんとミーミシアさんは祖国に戻るし、ケイン殿下も思い切って国外に出た方が、スキルの力も発揮しやすいはずだ。


こうして俺は「レッツライト商社」を作り、経済と政治を駆使して戦って、ひとまずは勝利を得た。そして、ようやく本来のライト工房に戻った。


もはや本当に喫茶店というべきか。

魔道具の開発は本当にやりたいことだけやって、試作をしたら量産は外注しているから、なんだか本当に喫茶店やりながら趣味で工作しているみたいになってる。


それにしてもレッツライトか。

レッツ共和国のライト商社で「レッツライト」。

急いでいたのでしょうがないが、レッツライト!

「さあ明り!」あるいは「さあ。正しい」または「さあ、右へ!」か。

こんな名前でよかったのかとは思うけど、とにかく急を要していたのでしょうがない。加速度を付けて益々巨大になって行く今、「かっこ悪いから変えていい?」ってわけにもいかないしな。


そう考えて、俺は思い出した。

ここは課外活動の魔道具研究所であって、通称まぐけんと名付けたのだった!

ライト工房として商業登録してから、すっかり忘れていた。


まぐけん……なんか、改めて考えるとちょっとかっこ悪いかも。

よし、これまで通りライト工房でいこう!

まあ喫茶店と呼ぶのは常連、じゃなくて今は関係者だけだからな。


そんな他者から見ればどうでもいいと言われるような悩みごとがあるのも、日常に戻った証拠か。

しかし、他に大いに悩ませる事態が発生してた。


ゾロク・ブレイズ第一王子が学園にやって来る。

卒業生の学園訪問だが、リーゼ殿下を救ったことへの感謝を伝えるためだそうだ。

「どう接したらいいんだ」

男爵が王族の訪問を受けるど、どうしたらいいのか。

それと褒美に何を望むかも困っている。


褒美なんだしこっちが好きなもの要求すればいい――ということにはならない。法外な物を要求されても王家も困るので、事前に打ち合わせが必要なのだ。

はっきりいって金銭はもう足りてる。

爵位や領地を得ても、レッツライト社と魔道具開発があるからかえって邪魔だ。


どうしたものかと頭を悩ませる俺だった。


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