16 ゲベッグ家
「なんだ。リットー商会がまた来ただと? 追い返せ!」
なに。既に屋敷に入れてしまった? タルボットの代わりに使用人の一人を執事にしたが使えぬ奴め。
「ギーズ。一緒に来るのだ」
「はい、パパ!」
仕方なく応接室に行くと、リットー商会の者達が待っていた。
「ゴラン・ゲベッグ子爵様。ギーズ・ゲベッグ様」
リットー商会のベルド・リットーは一礼するものの、無表情だ。
「ああ。わしは忙しいのだぞ」
「では単刀直入に用件を述べさせていただきます。当商会への返済期日が過ぎております」
「それはジョウという者が勝手にしたのだ。わしは知らんと言ったではないか!」
「契約はゴラン様ご本人。そのような無法は通りません」
「ええい。うるさい。わしは子爵だぞ」
「そう言われても、期限が過ぎています」
「期限を延ばせ!」
「無茶なことを! 既に二度伸ばしておられる。鉱山の開発運営のためにもご返済されるとの約束でした。こちらも計画を進めているのです。これ以上の返済延期は無理でございます!」
「……そうだ。ならば、さらに借りてやろう。それならどうだ」
「パパ、それは良い案だね!」
ベルドは一瞬、ぽかんとしていたが、立ち上がった。
「もはやこれまでですな。契約書を今一度、読まれた方がいいでしょう。では、失礼いたします」
そう言って屋敷を出て行った。
「無礼者め! せっかく金を借りてやるというのに」
「そうだよね、パパ」
「今度来たら、ギーズ。叩きだしてやるのだ」
「わかったよ!」
二人は契約書の確認すらしなかった。
契約に担保があることを理解していなかった。