プロローグ
初投稿です。
よろしくお願いいたします。
神の名において、知は選ばれし者にのみ許される――
それが、この国の理だった。
王国ラステリア。
魔法という力は、神への祈りによってもたらされる“奇跡”とされ、
それを操る資格は、聖職者と貴族にだけ与えられていた。
文字もまた、同じだった。
書くことも、読むことも、選ばれし者だけの特権。
言葉は神の領域であり、平民が扱うにはあまりに“神聖すぎる”とされた。
それは、数百年かけて編まれた静かな支配。
誰もが疑わず、誰もが従っていた。
――けれど。
「読むことが、罪だなんて。どうして?」
そう思った少女がひとりいた。
彼女の名は、アリア・ウォルフォード。
王都の片隅、かつて教会が手放した古びた孤児院。
冷たい石の壁と、雨の染みた天井の下。
誰にも望まれずに育ったその少女が、
偶然手にした一枚の祈祷文から、“禁じられた言葉”に触れてしまった。
それは、知らなければよかったはずの真実。
けれど、知ってしまったからには――もう、戻れない。
読むということは、罪ではなかった。
それは、世界を知ることだった。
そして、世界を変える力になるということを――
アリアはまだ知らなかった。
だが、この小さな疑問が、
やがて世界の理そのものを揺るがす“革命”になる。
物語はここから始まる。