稀代の魔女がどこへ行こうが構わないと仰るのですか?
テルダール王国には、代々仕えてきた魔女がいた。
彼女の名はユリエラ。
その存在は、深い森の霧のように、人々の意識の隙間にふわりと漂っている。古文書には幾度もその名が刻まれていたが、それが一人の魔女によってもたらされた功績だとは、もはや誰も思い出せなかった。
彼女は年を取らなかった。
数百年の時を生きながら、その姿は常に若く、決して人前でその顔を見せることはなかった。
――だが、それは「醜いから」ではない。
「人を惑わせるから」だ。
ユリエラの顔を見た者は、時に恋に落ち、時に魂を抜かれたように呆けた。
その美貌を見てしまえば、もはや他のことに心が向かなくなる。
だから彼女は、自らに“仮面の魔法”を施した。常に黒いローブとフードを身に纏い、顔は霞んだように揺れ、決して判然とは見えない。
「不気味な女」と、王宮の若い侍女たちは囁き合った。
ユリエラはその声に、いつも静かに微笑んでいた。
もう何十年も、いや百年以上も、そんな目で見られてきた。
「慣れている」と言えば嘘にはならない――だが「慣れた」と言えば、少し心が痛んだ。
(私は……愛されなくていい。ただ、この国が少しでも長く続けば、それで)
ユリエラはそう思っていた。
魔女としてではなく、一人の女として。
彼女が心から仕えていたのは、初代国王アルデルのみ。
恋愛感情ではなく、心の底から敬愛していたのだ。……いや、実際にその感情がなかったのかと問われれば答えにくくはあったが。
ともあれ、若き王アルデルはまだ不安定だった王国をまとめ上げ、ユリエラの知恵と魔術に深い敬意を払った。彼女の美貌を知りながらも、決して私的な感情に溺れることなく、彼女を一人の人間として、臣下として遇した。
(あの人は、私を見てくれた。顔ではなく、力ではなく、心を)
もう百年以上も昔のことだったが、その誠実な眼差しは、ユリエラの胸の奥に今も灯る。
だが――そんな過去を知る者は、今の王宮には誰一人いなかった。
現在の国王レオルドは、まだ若く、そして素直すぎる性格だった。
それは善にも、悪にも傾きやすいということ。
彼には婚約者がいた。名はエルディア。
清楚な顔立ちに、礼儀正しき所作。誰もが認める貴族の令嬢であったが、同時に――非常に強い嫉妬心を持つ女だった。
「あの女はおかしい。ずっと年を取らず、顔を隠している。そんな者を、傍に置いていいのですか?」
侍女たちにも次第に口を揃えるよう言わせた。「不吉な女だ」「夜中に城の外を歩いていた」「誰かに呪いをかけている」
――エルディアは時間をかけて周囲を巻き込み、噂を広がっていったのだ。
そしてついに、王宮に勅が下された。
「魔女ユリエラ、貴様はもはや我が王城には必要ない」
異を唱える者はいなかった。
誰も、彼女の功績を知らなかったからだ。
いや――知ろうともしなかった。
そんな周囲の視線を一身に浴びながら、ユリエラは沈黙の後、口を開く。
「……しかし私がいなくなれば魔物避けの結界を維持できなくなります。それにこの地は元は干ばつ地、定期的に雨を降らせねばすぐに乾いてしまいますよ。当然、家畜は死に絶え農作物も取れなくなりますが」
「それらがすべて自分の手柄だった、とでも言うつもりか? 自己保身の為にそんなことを言って恥ずかしくないのか?」
「いえ、ただの事実なのですが……」
「くどい! 我が国に怪しげ術など必要ない! 即刻立ち去れ!」
最後は憤慨しながらユリエラを罵倒するレオルド。
視線を感じ、そちらを向くと、そこではエルディアが笑っていた。口元を扇で隠してはいるが、明らかに。
いい気味、とでも言いたげであった。
「そうですか。私が……守ってきた国は、もうないのですね」
ユリエラは静かに呟いた。声には怒りも、恨みもなかった。ただ、ぽつんと置き去りにされたような寂しさがあった。
彼女が門をくぐるその瞬間、誰かが吐き捨てるように言った。
「ようやく出ていったか、気味の悪い女め」
それに続いて、誰かがくすりと笑う。「せいせいした」という声も聞こえた。
ユリエラは立ち止まった。
……いいえ、私は慣れているわ。昔から、そうだった。物心ついたときから、人と違うことを恐れられていた。声をかければ逃げられ、目が合えば睨まれた。それでも私は――。
ふ、とユリエラは目を伏せる。
――それでも、私なりに国を愛していたのよ。
静かに振り返り、もう一度だけ城を見上げる。あの塔の一番高い部屋が、私の住まいだった。風の通りがよくて、夜には星が綺麗に見えた。
「さようなら、テルダール。さようなら。アルデル……」
誰にも届かぬ言葉を残して、ユリエラは城下を後にした。
◇
彼女の故郷は、遥か北の山岳地帯にあった。昔は一軒の山小屋しかなかったその地に、今や小さな王国が築かれていた。驚きはしたが、誇らしくもあった。
「私がこの地に植えたリンゴの苗……まだ残っていたのね」
木の根元にしゃがみ込み、そっと手を当てる。手から魔力が流れ、枯れかけていた葉が生き返るように瑞々しさを取り戻した。
「さて、ここも長い間放置していたから荒れてしまったわね。少し掃除をしなければ」
周囲には魔物の気配。
どうやら長い間放置しているうちに大量発生したらしい。
「はぁっ!」
土の塊が、螺旋を描く水が、魔物たちを退けていく。
あれから数日、随分と魔物も減ったがまだ巣は多く残っている。
「少し、疲れたわね」
一息吐くユリエラ。その背後に突如気配が生まれる。
魔物だ。その中には知能が高いものもいる。
油断したのを見計らい、襲い掛かろうとしていたのだ。
手にした棍棒が脳天に振り下ろされる。その瞬間、
「危ない!」
若い男の声が飛んだ。鋼のように鍛えられた体、凛としたまなざし。剣が魔物を一閃する。
「大丈夫でしたか?」
爽やかな声、微笑みかけてくる青年のその顔を見たユリエラが固まる。
(あの顔……どこかで……)
それは、かつて彼女が密かに想いを寄せた初代テルダール王――アルデルに、あまりにもよく似ていた。
「お怪我はありませんか? 私はこの地方を統べるグラニアの王太子、ケルヴィンと申します」
「ケルヴィン……様。……いえ、大丈夫です。助けてくれて、ありがとうございました」
「ははは、小さな国の王太子です。呼び捨てで結構ですよ。……しかしこのような場所にあなたのような美しい女性が何故……」
はたと気づく。
ローブを纏っていないのだ。辺りには全く人がいないので、気が抜けていた。
ユリエラの呪いにも似た美貌は異性を虜にする。慌てて顔を隠そうとするが……青年にはその力が効いている様子がない。
「平気、なのですか?」
「? 何がです?」
きょとんと首を傾げる青年。
その屈託のない表情にユリエラは奇妙な恥ずかしさを覚えていた。
「まぁ大丈夫なら何よりです。ところで貴女のお名前を伺っても?」
「ユリエラ。かつて……テルダールで暮らしていた者です」
ケルヴィンの眉がわずかに上がる。
「もしかして、あの“土と雨の魔女”と呼ばれた……?」
「……懐かしい呼び名ですね」
思わず苦笑する。
それはアルデルが勝手に付けた呼び名だ。
恥ずかしいと否定したが、名を知らしめるには大仰な方がいいと、半ば無理やりそう付けたのだ。
「貴女が伝説と謳われたあの……! ユリエラ殿、貴女をぜひ王宮にお迎えしたい。我が国は今、食糧難で苦しんでいる。力を貸していただけないでしょうか」
その言葉に、ユリエラはしばし黙り込んだ。
テルダールでも、かつて同じように頼られた。雨を降らせ、土を肥やし、豊穣をもたらした。
だが最後には不気味と疎まれ、追い出されたのだ。
「……申し訳ないけれど、今は人を信用する気になれないの」
ケルヴィンは困ったように笑った。
「そうですか……」
しょんぼりした彼の姿にアルデルを重ね、ユリエラは同情心が生まれる。
「ま、まぁたまに来るくらいでしたら構いませんが……」
「本当ですかっ!?」
まるで子犬のような明るい顔に思わずドキッとする。
あぁ、私はとんでもないことをしてしまったかもしれない。
後悔するユリエラだった。
◇
それから数日後。
ユリエラは小屋の再建に励んでいた。
これもケルヴィンが毎日のように訪れ、手伝ってくれたからだ。
最初はいきなり鍬などを乗せた荷車を持ってきたから本当に驚いたものだ。
「なんだか罪悪感です。王太子に土いじりなどさせて、良いのでしょうか?」
「俺にできることは少ない。だからこそ、貴女のような力を持つ方が必要なんです。これも貴女を懐柔する作戦というやつですよ。ははは」
額に汗をかきながら働くケルヴィン。その横顔には先刻白状した腹黒さは微塵も見当たらない。
(この人は、違うかもしれない)
思う。思いたい。それでも……
「それでも、私はもう……あの時のようには戻れない。城へは行けません」
「構いませんとも。貴女がここにいることこそが、俺たちにとって救いなのです」
王太子はそれだけを言い残し、静かに帰っていった。
ユリエラは見送る背中をじっと見つめていた。
かつてアルデル王のただ一人の理解者として尽くしてきた日々が蘇る。
あの頃の温もりが、微かに彼女の頬を撫でた。
(私は……もう一度、人を信じてみたいと思っているのかもしれない)
夜、窓の外に光る星を見ながら、ユリエラは独りごちた。
「この空の下にも、まだ……愛せる国があるのかしら」
◆
一方その頃、かつてユリエラが仕えていたテルダール王国では、空を見上げて嘆く民の声があちこちから聞こえていた。
「また雨が降らない……」 「畑がもうもたないよ。土がまるで灰みたいだ……」 「それに、最近やけに魔物が出るじゃないか。こんなこと、今まであったか?」
人々はざわつき始めていた。だが誰もが、直接的な原因を口に出すことを恐れていた。ようやくひとりが、誰にも聞こえぬほどの声で言った。
「……もしかして、あの魔女を追い出したせいじゃ……?」
「馬鹿なことを言うな!」と若き王子が即座に否定した。「あれは、あの者が不気味だったからだ。魔術など、もはや我が国に必要ない」
だがその言葉に、誰も強く頷けなかった。
その矢先だった。
「魔物だぁぁぁぁっ! 魔物が現れたぞぉぉぉっ!」
突如として城を囲むように現れる魔物の群れ。
王子、レオルドは兵を率いて戦いに臨む。が……
「城門が突破されましたぁ!」
「王子! そのような場所に立たれていると……」
ザシュ! レオルドの胸に突き立つ矢。
夥しい量の鮮血が石畳に広がっていく。
それを窓の中から見ていたのは、その婚約者エルディアだ。
しかし彼女はレオルドを慮るばかりか、
「いやっ、いやああっ! 魔物にレオルドがやられたわ! すぐに扉を杭で打ち付けて! 誰も入れないように!」
「エル、ディア……」
王子は呻きながら、閉ざされていく窓へと手を伸ばすのだった。
◆
その頃、ユリエラは小国グラニアの片隅で茶を飲んでいた。
窓の外には、整えられつつある庭の緑。
野鳥がさえずり、草花が風に揺れる。平和な光景に思わずほう、と息を吐く。
しかしその内心はあまり平穏とは言えない。
「来てしまった……」
美味しいお茶をご馳走する。
そんなケルヴィンの言葉に釣られ、つい城にまで出向いてしまったのだ。
何度も誘われ、何度も断り、それでも諦めない彼の思いに打たれた……のかもしれない。
「それに……本当にお茶は美味しいものね」
そう呟き、陶器の湯呑みを揺らす。
淹れたのはハーブティー。昔、城で嗜んでいたものに近い味がした。懐かしさが、微かな笑みを引き出す。
「けれど、私は……」
呟いた声は、すぐに空に溶けた。
代わりに現れたのはケルヴィンである。
「どうだろう? この王宮で取れる茶葉は絶品と評判なんだよ」
屈託のないケルヴィンの笑顔に思わず顔を背ける。
「ところでこの城に来てくれるという話、考えてくれただろうか?」
「ありがたいお話ですわ。でも……今は人を信じることが、まだ……」
「そうか。まぁゆっくり考えて欲しい。それより──」
ユリエラが話しにくい話をさっと端折り、楽しい話題にシフトさせる。
こうして付かず離れず、しかし確実に心の中に踏み込んでくる。
そんなやり方もかつてユリエラが敬愛した王、アルデルと重なって思えた。
「私、は……」
あの人に抱いていた淡い想いを、今、この若き王に重ねてしまっている自分がいた。
◇
こうして、ユリエラとケルヴィンの逢瀬は幾度となく繰り返された。
時には城に招かれ、時には彼女の家を訪れ、二人の仲は明らかに縮まっていった。
ケルヴィンは決してしつこく誘うようなことはしなかった。
ユリエラが言葉を濁せばすぐに引く。誘うように。その仕草がまた彼女の心を揺らしていた。
「ずるい……私ばかり……」
気づけばユリエラは、その訪れを待つようになっていた。
ため息を吐く日が、確実に増えていた。
◇
数日後。空が、軋んでいた。
ざわつく風。重たく低く唸る雲。あまりに不吉なその兆しに、グラニアの民は怯え始めていた。
「まるで、空が怒っているみたいだ……」
「これは、あの魔女のせいなんじゃ……?」
かすかな囁きが、火のように広がっていく。人々の間に潜んでいた恐怖が、理不尽な疑念となってユリエラの名に結びついた。
「違う。ユリエラがそんなことをするはずがない!」
ケルヴィンは強く否定した。
「ですが、魔女でしょう?」「そうです。魔女というのは邪悪な存在、そう教会でも教えられていますよ!」
「私は彼女を知っている。あの人は……あの人の心は邪とは程遠い。純粋で優しい、ただの女性だ!」
しかし、言葉で嵐は止まらない。
それどころかケルヴィンが魔女に操られているのでは、という噂すら流れていた。
そんな村人たちの噂を通りすがりのローブの女性が聞いていた。
「……やはり、魔女は魔女でしかないのですね」
人は自分と異なる存在を排する。
魔女はその最たるものであった。
誰からも疎まれる存在だ。
こうなるのが当然なのだ。
ケルヴィンだってきっと、心の奥底では──
これ以上この国にいるべきではない。ユリエラは逃げるようにその場を後にする。
国中に雷鳴が轟き、豪雨と竜巻が国を呑み込み始める。
森が裂け、家々が倒れ、悲鳴が空に吸い込まれていく。
そんな嵐に向かい、歩いていた。
「──あぁ、もう!」
ローブを脱ぎ捨てると同時に、凄まじい大竜巻が周囲の雨雲すら飲み込んだ。
ユリエラの魔力が形を成して周囲を揺蕩う。
金色の魔法陣が幾重にも重なり、彼女を取り巻いている。
杖など持ちはしない。ただ、その掌から溢れた魔力が、大地と空を貫いた。
「嵐よ、鎮まりなさい」
だが──それでも、嵐は止まらなかった。
まるで国そのものが泣いているかのような怒涛。人間の愚かしさ、王たちの傲慢、そして彼女が受けた痛みを、この天が覚えているかのように。
ユリエラの魔術は強大だったが、嵐はそれをも超えていた。
「っ……まだ……足りないの?」
指先が震える。呼吸が乱れる。力が抜けていく。
全ての魔力を出し尽くすが、それでも足りない。
「っ!?」
空が閃く。雷の直撃がユリエラを貫こうとしていた。
──死、そんな単語が頭をよぎった、その瞬間である。
「ユリエラ!」
叫びとともに飛び込んできたのは、ケルヴィンだった。
巨大な落雷から彼女を庇い、その身に焼けるような痛みを受けて崩れ落ちた。
「ケルヴィン……! どうして、どうしてここに!」
「君を……放っておけるわけが、ないだろ……!」
「街から去っていく、君を……見つけてね……慌てて追いかけてきたってわけさ。兵たちに捕まったおかげで助けが遅れたことを詫びさせてくれ……」
「馬鹿じゃないのですか!? あなたは! 魔女の為に身を挺するなど……」
「でも……君も国のために身を挺してくれたじゃないか……」
ハッとするユリエラ。
まるでその顔が見えていないかのように、ケルヴィンは言葉を続ける。
「君に城へ来るよう、何度も誘い、断られた……それでも君は、俺を邪険にすることはなかった……知っていたよ。君は既にこの国を守ってくれるつもり、だったのだろう……?」
その通りだった。
ユリエラの心は既にこの国に、ケルヴィンにあった。
だから嵐を止めようとした。しかし……
「あなたが死んだら、意味ないじゃない……!」
ケルヴィンの手の力がゆっくり失われていくのがわかる。
手だけではない。目はゆっくり閉じられ、全身が弛緩していく。
かつて敬愛したアルデルの最後が、彼女の脳内を駆け回る。
「あ……ぁ……」
一瞬にして気持ちが溢れる。
涙が溢れる。そして──
「ケルヴィーーーンっ!」
傷だらけの彼を抱きしめたその瞬間、ユリエラの中で何かが弾けた。
怒りでも悲しみでもない。ただ、ひとつの確信。
「私は……まだ、人を信じたかったんだ……」
彼を傷つけた嵐を、絶対に許せないと思った。
再び魔力が湧き上がる。今度は違った。胸の奥底から溢れるのは、慈しみと祈り、そして――愛。
「──聖なる風よ、我が心に応えよ。すべての憎しみを、赦しへと変えて──!」
地に刻まれた魔法陣が輝きを増し、彼女を中心に無数の光が放たれた。
──黒雲が割れ、光が射し込む。雷は静まり、風は止み、嵐は霧散した。
静寂。涙のように降り注ぐ、柔らかな雨。
ユリエラは、傷を負ったケルヴィンを抱きしめながら、その頬に触れた。
「すごいな……これが魔女の、力か……」
「ケルヴィン!? 生きて……」
「はは……死んだ祖母が川の向こうで言っていたよ。そんな美人を残してこっちに来るなってね」
「もう……!」
ユリエラの目からは涙がとめどなく溢れていた。
それでも顔は笑っている。嬉しくても涙が溢れることを、魔女は初めて知った。
ケルヴィンは微笑みながら、かすれた声で言った。
「ユリエラ……これからも、ずっとそばにいてくれるかい?」
ユリエラは、ほんの少しだけためらったあと、笑った。
「ええ。……あなたの淹れてくれるお茶はとても美味しいですから」
そして、ふたりはそっと唇を重ねた。
長く続いた孤独と、短く激しい嵐のあとに、ようやく訪れた穏やかな陽射し。
魔女ユリエラは、かつて失ったものを、もう一度この手に取り戻していた。
──おわり。