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第29話 崩壊×覚悟×決意

 グランドとリバーシが竜の背骨の内部を順調に突き進む中、突如として坑道内に激しい揺れが襲った。


「もしかして爆撃がもう!」


 リバーシとグランドは、何かただごとではない感じの騒がしくなった天を見上げ、先へと進めていた歩みを止めた。そして聞こえた通信回線ごしの浦島銀河の声に、マイ・トメイロは顔色を変え、己の眉間に皺を深めた。


「なぜだ!」


「た、たぶん! 竜の背骨の位置が、ここの重力場が一時的に強まりすぎたかなんらかの手でレーダーにキャッチできたからだと! くっ、爆撃が……ずっと近い!」


 そんな銀河の慌てた様子の分析に、マイトは思わず舌打ちをする。


「チッ、やっぱり勇猛さなんてものは! ──このままじゃ俺たちも破滅だ! WGは俺たちをアリの巣の蓋にして見捨てる気だ、急いで戻るぞ!!」


 顔を凄ませたマイトの繰り出した言葉に、銀河は焦りながらも了解した。


「は、はい!!(ここもアニメの通りじゃない……あぁー! 俺は、馬鹿だ! なんで突入を止めなかったんだ! WGの打ちそうなこういう手も玄人は想定できたろ!)」


「悔やんでる場合か! お前も力をかせ!」


「もちろんっ!! 悔やんでなんかないっっ!!」


 グランドとリバーシは止めていたその足を素早く駆動させた、踵を返し、元来た道を引き返そうとした。

 震える不穏な坑道内でまた鉢合わせた──敵意の銃口と刃を向けてきたカーゼへと、グランドはハクジンを構え、横薙ぎに振るった。


「今はこんなとこで戦ってる場合か!! 上で鳴ってるのはドラムじゃない、どけッ!!」


 グランドのハクジンが、伸び、二つに分かれた。横薙ぎに振るわれた白棒は、そのリーチ以上に伸び離れたカーゼを襲ったのだ。

 二つに分かれた白い柄が、雷電の糸で繋がり、まるでヌンチャクのようにカーゼの側頭部を素早く殴打した。頭を激しく打たれたカーゼはそのまま手持ちのマシンガンをあらぬ方向へと乱れ撃ちながら、坑道の鉄壁に衝突し、あえなく爆散した。


 障害を取り除いたグランドとリバーシの二機は、爆撃音が頭上で鳴り続ける危うい坑道を駆け抜け、出口を目指して全速力でここからの脱出を試みていく────。





 一方、レンズ環境制御室では、アント・マント少将がコンソールを打ち鳴らし一人で制御しながらも、怒りも天地の震えも収まることはなかった。


「起動童夢兵器……レンズ屋のカーミラ・ミラーとかいう武器商人連中の言うことは信用ならん。だが、腐らせた地にへばりつき、傲慢にも宇宙を支配しようなどと考える愚かな連中に、ここをただで明け渡してなるものか……!!」


 アント・マント少将はそう呟くと、落盤した瓦礫にひっかけた背の赤いマントを強引に引きちぎった。そしてたった今コンソールに入力し、現れた──指揮官である自分のみぞ知る「秘密の地下エレベーター」に、迷いなく、ただならぬ覚悟を背負い乗り込んだのであった────。





 その頃、陸戦艦ドザー艦内では、艦長のメディカ・ズー大尉が冷静に焼ける砂漠を遠く見つめながら、指示を出していた。


「よし、戦果もデータも十分であろう。健在のズザー二隻にも告げろ、プロトマーズ隊を全機収容してここを離れるぞ。WGの取った作戦は、資源の無駄ではなかったようだ。これ以上の義理はない、残弾ぐらいは撃ち尽くして構わん」


「ノアはまだ離れないようです」


 通信兵の女の報告に、メディカは一瞬顎に手をやり、すぐにその仕草を解いた。


「義理堅いな。構わんハナ──」


 だが、メディカが冷静に判断をまた下そうとしたその時──ドザーに属するプロトマーズに搭乗する新兵の一人が、艦の通信回線に割って入った。


「こちらプロトマーズスリー、竜の背骨内部に向かった彼らのことを探させてください!」


 そんな若造の声がブリッジに響いた、一瞬の沈黙の後、制帽を外していたメディカ・ズーはフッと笑った。


「──! 好きにしろ。だが、後で貴様のメンタルチェックはそのぶん念入りにするぞ。──よし、残弾を撃ち尽くせ! スッキリ軽くしておけェ!!」


 メディカ艦長の許可を受け、プロトマーズ3の新兵は勇ましい返事をした。


 深緑色のクセ髪に、また制帽を被らせたメディカは、ドザー及びズザー陸戦艦隊に周辺エリアで戦線を維持しつつあと3分間上手く居座るするよう指示を下した。



 旗艦ノアは、爆撃にさらされる光景に巻き込まれないギリギリの距離を保ち、出撃した二機の帰投を待ちながらいた。依然、出払い艦の護衛に就いたフェアリーナイトやトーキック部隊が、未だ砂漠のステージに残る敵勢力と交戦していた。


「ちょっと……! なんでミサイルなんかじゃんじゃんアソコに撃っちゃってんきゃあ!? ──もうっっ、邪魔なんだから!! アタレェ!!」


 横から打ちつけたマシンガンに被弾したフェアリーナイトに乗る佐伯海魅は怒りに任せ、振り向いて翳した右手からマジックビームを放ち、カーゼの頭を見事に撃ち抜いてしまった。


「見送ったんなら……カラメルバッチリ! なんでしょ!!」


 フェアリーナイトの青いアイカメラは爆撃されてゆく砂漠の彼方を見つめながら、ぐっとその両手にパイロットの感情と同期した、握り拳をつくっていた────。

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