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第21話 スコア×スコア

『そこにメカがあるならばそこにメカニックがいる』byメッカ・メイ整備兵


彼の興味は敵の砲撃の音が鼓膜に響いても冷めない気にしない。他の整備仲間が母艦ノアへと引き返していても、彼だけは灰色の装甲に特殊な工具片手にかじりついていた。いま胸部装甲板をつなぎ目からひとつ外し、なんとか未だ開かぬコックピットハッチ内部へと潜れないかを四苦八苦……手を変え工具を変えスパナを変えメッカ・メイ整備兵は未知の機体にのりかかり宝を掘り返すかのように挑んでいた。


「戻って何をすんでぇい、メカニックはメカのそばでカミさんのように働くんだよ! だからそろそろッッ────愛してると言ってくれ、片手のもげた灰色耳兎(アルミラージ)ちゃぁん!ノヲッ!!??」


灰色の斜面を取り置いていたメカニックの小道具がすべる、ひっぺがしかけたちいさな装甲板に慌てて手をかけるが────


『そこの偏愛メカニック、邪魔なんで降りたらどっか散ってくださぁーい!』


「じゃっ、邪魔だと?? ヘンアイメカニってウゴッ!! おれちゃんのアルミラージがしゃべった!?(雌じゃなくて雄だったァ!?)」


大きな灰色の右手のひらにキャッチした汚れたツナギをきた小人を、丁重に足元砂場へと下ろした。

砂地にずっこけた仰向けになったメカニックのへそを大きく跨ぎ影が覆う──過ぎ去る。

さっきまで砂地に埋もれ倒れていた灰色の巨大ロボットがひとりでに動き始めた。しかし冗談を喋っているのは機械ではないパイロット。冷汗をかいたメッカ・メイは慌てたように身と面についた砂を払いながら、その灰兎の背挙動を見上げ目を凝らした。





立ち上がって2、3歩……運悪く接敵してしまったのは、灰色の機体操るパイロットが戦況が全くわからずに今まさに探り始めようとしていたそんな時。横殴りの弾丸が灰色の耳元をするどく掠めた。


レーダーよりも大事なのは目と耳と思い切り、ときに敵のいどころを察知する嗅覚だ。重力場を乱すレンズの登場により様変わりした戦い、そのイニシアチブを既に取られてしまった。

夜の闇にまぎれた紺色の機体カーゼだ。まぎれもない宇宙連合軍CFの主力を担う量産機その一機が、砂の地に立ち特徴的な三つ目を赤く点らせ、両手で構える武装カーゼマシンガンを乱射する。


「見つけたぞスコアああああ!! はははは裏を嗅ぎまわって出会ったのがWGのグランドロボットたぁさっきの悪酔いも醒める程ついてるぜ、そぉれリッキン・マシボリー曹長様のお通り…おとおりだーー!! はははは宇宙式はチマチマは呑まねぇ星の数ほどくれてやる俺様のカーゼさばきに酔いつぶれやがれーー地球の野兎ぃぃいい!!」


暗い砂漠を騒がせ、砲口が熱く光り垂れ流される豪快なその弾幕は────


「ぃいいいい────イッ!?? は、はねぇっ!??」


ご機嫌に乱射するマシンガンの的にしていた灰色野鼠が消えた、いや消えたのではなく跳ねた。

長耳の見たこともないグランドロボットが、宇宙連合軍のカーゼの目の前へと大跳躍で着地し姿を見せた。


索敵もへたっぴのソレがそんなに俊敏に動くとは思わなかったのだろう。

片腕のもげた野兎が、黒い謎の目隠しをした異様な面が、灰色のグランドロボットが今砂を蹴散らし敵機を睨んでいる。


コックピットごしに対面した野兎は可愛くなどない……今まで蹂躙していた小物とは対峙するスケールがぜんぜん違う。灰色のグランドロボットが放つ勢いと差し迫るプレッシャーに一気に呑まれてしまったのは……とある一人のカーゼ乗り。


GRのカーゼに乗る戦いがこれほど大きいとは思わなかったのだ、これほどロボットが跳ねるとは思わなかったのだ。宇宙連合軍の軍服を纏うそのパイロットの体にどっと冷汗が伝う。


怯えていたのを誤魔化すようにマシンガンを至近で撃ち放とうとするが────弾切れだ、楽に狩れるとばかりに無駄弾を撃ちすぎたせいか。

使えない鉄の塊を怒り地に捨てた。そして怒りのままに体を機体を奮い立たせる。腰部にさげていた最終手段を今手にし、冷汗と在処のない自信に酔いながら暗示する……目の前、灰色のスコアへと刃を向け走り出した。


赤熱する右の電磁チョッパーをあたかも右フックで殴りつけるように勢いよく振るった。

だが赤いお熱い包丁が切ったのは、灰色の耳でもなく影でもなく────虚空。


「ふらふら…デジャブか!」


「オレはッ、俺は不乱のおおおおおお」


思わず後ろにスウェーし避けたデジャブと、繰り出された荒々しい右フックのデジャブ。

ならば今度は後悔しないように、灰色のパイロットは覚悟を決めてそのチャンスへと────飛び込んだ。


「イッパツ!!!」


右手に顕現させたグランドナイツソードを刹那に刺し込んだ。歪んだ砂上を踊る歪んだ姿勢の敵機体…その脇腹へと、グランドパワーを込めた魔法の刃がすっと通った。


やがて敵機は両膝を着き、赤くギラついていた三つ目が順次その光を失う。

そして夜の砂漠にあざやかに爆散する紺色ピースの雨がふる。

それは魔法かファンタジーかあるいは新たなグランドロボットの成す超常現象、奇跡の類いか。


浦島銀河操るリバーシは迷い込んだグランド世界における初めての宇宙連合軍とのGR戦闘で、正真正銘のカーゼ1機、勇ましい初の撃墜スコアを刻んだ────────。

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