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仕事ができない上司VS仕事をしない上司

 上司の所為で酷い目に遭った経験をした人は多いのじゃないかと思う。パワハラは問題外として、僕の場合、それは大きく2パターンに分かれる。仕事ができない上司と仕事をしない上司だ。

 僕はシステム会社に所属していて、客先常駐という形で別の会社で働いている。だから、常駐先のその会社の社員が上司となるのだけど、その時の上司…… 仮にDさんと呼ぶけど、彼は中途採用で、しかも期待されていると説明されていた。前職が有名な情報技術系の会社で、しかも学歴も高かったからだ。英語はペラペラらしい。

 ただ、一緒に仕事をするようになって、直ぐに僕は“なんかおかしいな”と感じた。CSVファイルというのご存じだろうか? 簡単に言ってしまえば、カンマで区切られて値が入ったファイルの事で、普通に開くと大体はエクセルファイルで開かれる。それであまり詳しくない人はエクセルファイルだと勘違いしている場合があるのだけど、実際はカンマと値が入っているだけだから、例えばセル結合されたファイルなどは作成できない。

 ところがだ。そのDさんという上司と組んだ時、彼はそのようなセル結合したフォーマットでCSVファイルを出力する機能を作ってくれと僕に指示を出して来たのだ。

 僕は目が丸くなった。

 それで「CVSファイルでは無理です。もし実現したいのなら、エクセルファイルを生成する機能にするしかありませんが、それだと工数が膨らみます」と説明をしたのだけど、どうにも納得をしてくれない。

 情報技術系の仕事をしていて、これはちょっと考え難い。

 結局、ユーザーから「そんな機能はいらない」と言われて作らなくて良くなったのだけど、僕は不気味な予感を感じた。

 それからまた別のプロジェクトでDさんと一緒にやる事になった。前の仕事は機能の拡張だったけど、今度は全く新しいプロジェクトだ。ドキュメントの管理方法や、プログラムやデータベースをセットアップする為のSQLの管理方法なんかも決めなくちゃならない。

 特にデータベースをセットアップする為のSQLは気を付けなくちゃいけない。データベースというのは、データを格納する為のもので、SQLというのは、そのデータベースを操作する為のプログラミング言語だ。このデータベースの管理が甘いと、プロジェクトはカオス状態に陥る。同じ項目のはずなのに、複数項目名があったり、逆に違う項目なのに同じ項目名があったり。これがいい加減だと、運行も開発も大いに困る事になる。だから、少なくともそれらは統一できるような管理体制を考えなくてはいけない。

 が、そこでDさんからとんでもない発言が飛び出したのだった。

 「そんなのやらなくていいよ」

 ――は?

 SQLの管理なんかせず、個別にそれぞれのプログラマが必要なSQLを持っておけば良いと、どうやら彼はそう考えているらしかった。

 一応断っておくと、これも普通に考えて有り得ない。それではリリースの時に流すSQLが分からなくなる。ただ、彼はプライドが高いらしく説明しても納得してはくれなかった。ただ、そのまま突き進んだら失敗をするのは明らか。それで僕は、彼をガン無視で勝手にルールを決め、プロジェクトを進めた。

 そんなエピソードは他にもあって、彼が作った設計書が滅茶苦茶だったので、彼が新婚旅行に行っている間に僕が作り直したり、彼の作った使えない管理資料は無視したりした。それで、まぁ、なんとかそのプロジェクトは無事にリリースできて賞まで貰えたのだ。

 

 散々苦労したので、僕はもう二度とDさんとは仕事がしたくないと思い、次のDさんがリーダーとなって始まるプロジェクトには参加を希望しなかった。

 が、甘かった。

 半年くらい経った頃だろうか? 「助けてくれない?」と課長から呼び出されて頼まれてしまったのだ。Dさんのプロジェクトの話だった。炎上しているという話は聞いていた。だから嫌な予感は覚えていたのだけど、僕に助っ人の依頼が来たのだ。

 課長からの依頼では断る訳にはいかない。僕はDさんのプロジェクトに参加をする事になった。そしてそれで愕然となった。

 ――SQLがどこにも管理されていない。

 前回のプロジェクトは、僕が強引に進めたとはいえ、成功させているんだ。なら、その成功例を参考にしてくれていると普通は思う。でも、彼は、Dさんはそんな事はまったく無視をしていたのだった。

 いや、それ以外にも数多に問題点があったのだけど、とにかく、このままでは駄目なのは明らかだった。僕は完全に越権行為なのだけど、再びDさんを上司とは思わず仕事を行った。

 11時まで毎日残業したり、休日出勤したりで、今回もなんとかプロジェクトはリリースできた。

 ただ、課全体の利益を吹き飛ばすほどの赤字を出したり、一時的に雇ったプログラマの方々の精神が病みかけたりと、まぁ、死屍累々の様相にはなってしまったのだけど。

 

 ところで、Dさんは飽くまで一時的なリーダーで、僕は普段は他の人の下で働いている。仮にこの人はSさんとしようか。このSさんは赴任されて来るなり信じられない発言をした。

 「仕事したくないから、覚えない」

 つまり、仕事をしない宣言だ。

 はじめは冗談かと思ったのだけど、本当にSさんは仕事を覚えてくれなかった。サーバーの再起動すらできなくて(シェルを実行するだけでマニュアルも作ってあるのだけど)、僕の不在時にサーバーが停止した際には軽く彼はパニックに陥っていた。

 その他、何かしら仕事の依頼が来た時に資料をまとめる事もしないのでこっちで作成したし、仕事の進め方すら僕が決めた。何しろタスク管理もできないのだ。

 彼が仕事を覚えてくれない所為で、トラブル発生時の対応の為に、僕は長期間の遠出などができなくなった。何しろ、トラブルが起こっても、Sさんはただ単に僕に連絡を入れる以外はほぼ何もしないのだ。まぁ、できないから当たり前なのだけど。

 ただ、それでも、Dさんに比べれば遥かにマシだった。できないくせに仕事をやって滅茶苦茶にされると、仕事を託された時により苦労をする。

 だから、まぁ、大きな文句は言わないでいた。因みにDさんは流石に仕事ができないのがバレたらしく、課長から手厚いサポートを付けられたりするようになった。

 が、ある日だ。こんな話を聞いて僕は目を丸くした。

 

 「Sさんが出世?」

 

 ほとんど仕事をしていたのは僕なのだけど…… と、僕が思ったのは言うまでもない。部下ががんばって結果を残しても、それが上司の手柄になってしまう。

 会社の社員評価方法って、もっとよく考えた方が良いのじゃないかと本気で思う。ピーターの法則とか、色々と言われているけどさ。

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