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12/22 セリフの句読点スタイルを修正しました。
セクハラ描写が入ります。
寝台の上に仰向けになって、目を閉じる。長いこと使われていないそこは、ひんやりとして少し湿っている。
先ほどから、何かがちりちりと神経を揺らしているのに、それが掴めなくてもどかしい。
「大胆な方だ」
いきなりアドリアンの声がして、ユーディトは飛び起きた。彼は寝台の足下の方の柱に寄りかかって、にやにやしていた。
「そんな誘われ方をされては、何もしない訳には行きませんね」
そう言うと、彼はユーディトの右足を捉えた。蹴って離れようとしたのに、意外に力が強い。
足首を掴んだ手の体温が、薄い絹の靴下越しに感じられて、震えが体を走った。ジーヴァの手とはまるで違う、血の通う人間の男の熱。
そんな彼女の反応にそそられたのか、アドリアンが嗜虐的な表情を浮かべた。
「なるほど、あなたは処女なのですね。てっきり、男女の秘め事はもうご存じだとばかり思っていました」
「っ!」
「それでは、こんな愛撫もご存じではない、と」
彼は右手でユーディトの右脚を持ち上げると、つと左手を滑らせて、彼女の膝裏をなぞった。
「いやっ!」
「その手を離せ」
ユーディトが叫ぶのと、ジーヴァがアドリアンの肩を掴んだのとは、ほぼ同時だった。
ごうっ、と部屋を突風が吹き抜けた。
「えっ、君は……」
突然現れたジーヴァに、アドリアンは目を丸くしている。手の力が緩んだのをこれ幸いと、がっと蹴りを入れて、ユーディトは自分の脚を彼の手から解放した。
「あたた。痛いじゃないですか、公女」
わざとらしくアドリアンが悲鳴を上げる。
「フン。指の四、五本、折れてしまえばいいのよ」
「ほんのちょっと、誘惑しただけなのに……」
寝台から降りたユーディトは、ジーヴァの後ろに駆け込んで、彼の上着にしがみついた。
「まさか騎士をお連れとはね……」
手をさすっていたアドリアンは、彼を見下ろすジーヴァを振り仰いで、そして口を開けたまま固まった。
「君、まさか……」




