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第108話 残存戦力の処理


 戦争が終結したため、私はミサと東雲姉妹を連れて、中央のランベルト宅に来ていた。

 ランベルト宅の客間で戦後処理の話し合いをするためだ。


 客間には私、ミサ、東雲姉妹、ランベルト、勝崎、ジーク、エックハルト、ドミニクが集まっている。

 なお、東雲姉妹は机に突っ伏して寝ている。

 無視、無視。


「さて、まずはお疲れ様でした。皆の頑張りにより勝利を収めることができたのは非常に喜ばしい限りです」


 私が皆の労をねぎらうと、ランベルト、勝崎、ジーク、エックハルトが頭を下げた。


「では、今後のことを話し合いましょう。まずは降伏してきた兵や領主のことです。私はこの者達を許し、自分達の領地に帰すつもりです。異論は?」

「特にないが、降ってきた者達の中には功がある者もいる。降らずに戦死した領主の領地を分け与えてもいいか?」


 ランベルトが確認してくる。


「どうぞ。その辺はお前が上手くやりなさい。私は基本的に干渉しません。ただし、幸福教が何たるかを理解するように」


 訳:争いが起きるようにはするなよ!


「その辺が難しいんだがな……まあ、やってみる」


 頑張れ、陛下!


「ドミニク、ランベルトを補佐しなさい。また、こいつはやりすぎるきらいがあるので、抑えなさい」

「かしこまりました」


 ドミニクが頭を下げて了承した。


「ランベルト、住民の様子は?」

「今のところは何もない。まだ事態が呑み込めていないんだろうな」

「まあ、そうでしょうね。開戦からひと月も経っていないのに終わりましたから。ランベルト、好きに政治をするのは結構ですが、間違っても女神教時代よりも厳しくしてはいけません。今はまだ比べられる時です」


 女神教時代より生活が厳しくなれば、反感を買うのは必至。

 それだけは絶対に避けないといけない。


「むろん承知している。それについてだが食糧等を配給しようと考えている。女神教がここまで弱かった主な原因は世界規模の飢饉が原因だ。まずはこれをなんとかしなければならない」

「わかりました。その辺は私が用意します」


 ポイントをめちゃくちゃ使いそうだが、私の信者もものすごい勢いで増えているし、大丈夫だろう。


「ひー様、民の安定も大事ですが、まだ敵は残っています。そっちはどうしましょう?」


 勝崎が聞いてくる。


「東と北ですね?」

「はい。東には女神教発祥の地と呼ばれる大きな町があります。ここには1万の兵がいるそうです。また、この前の戦いの残党共が北の地に集まっております。早急に対処すべきです」


 戦争には勝ったが、まだ敵対勢力は残っている。

 女神アテナを消滅させるにはそいつらを処理しなければならない。


「ドミニク、東の町は降りますか?」


 ドミニクは女神教の大司教だったので東の町にも詳しいだろう。


「難しいでしょう。あそこは聖地ですし、法王がいます。簡単には降りません」

「法王?」

「王と言っても権力はありません。ですが、巫女様クラスの影響力がありますね」


 そんなのがいるのならば、降伏勧告をしても無駄っぽいな。


「では、攻めましょう。しかし、1万ですか……」


 多いな……


「こちらは降ってきた兵を合わせますと、3万近くはいます。兵器もありますし、十分に落とせると思います」


 勝崎は自信満々だ。


「それはそうでしょうね…………でも、住民をもらいたいんですが……」


 兵は最悪、死んでもいい。

 だが、住民は欲しい。


「ひー様、ちょっといいか?」


 ランベルトが手を挙げた。


「何でしょう?」

「東の町を落とすのは賛成だ。そこで、落とし方を2つ提案しよう。1つは力技だ。兵力と兵器を前面に出し、攻める。正攻法ではあるが、敵味方の被害は大きくなる」

「だと思います。もう1つは?」


 ランベルトのことだし、どうせロクなもんじゃないだろうなー……


「ハーフリングから聞いていると思うが、東は飢饉があった。とはいえ、周辺の村や町から食糧を輸入しているからそこまで大きな騒ぎにはなっていない。女神教としても優先する町だからな。だからこそ、大軍で街を包囲し、糧道を絶ってしまえばいい。それであの町は干上がる」


 ほらね。

 最低な案だ。


「住民も干上がらせるわけですか……」

「そうだ。女神教が食糧を独占しているというビラをまき、人心を離れさせよう。そうすれば、いかに聖地とはいえ、反乱が起きるぞ。飯が食べられなくては信仰もクソもないからな」


 住民を扇動するわけか。

 戦後、私が食料を配れば、女神教から心が離れた人々は私を頼るだろう。

 良い手ではある。


「住民に相当な被害が出そうですね……」


 反乱が起きれば、当然、敵の兵は鎮圧するから人は死ぬ。

 もちろん、餓死者も出る。

 かなりの死傷者を出しそうだ。


「正攻法でやっても、あそこの町の住民がひー様の信者になるには時間がかかる。多少の犠牲が出してでも、女神教から人々の心を離すべきだ」


 まあ、そうだろう。

 ランベルトの意見は人道的にはアウトだが、私的には美味しい話ではある。

 

 …………仕方がないか。

 散々、ビラを撒いたのにいまだに女神教なのが悪い。


「わかりました。その方法で進めなさい。北はどうします?」

「放置で良いだろう。多少の兵を残しておけば、負け続きの兵達では攻められない。残党共は後回しにし、東を先に片付ける」


 まあ、ここまで来たらランベルトに任せよう。


「勝崎、ジーク、エックハルト、ランベルトを補佐しなさい」

「はっ」

「わかった」

「承知した」


 3人は頷き、了承した。


「それとジーク、戦争はほぼ終わったも同然です。獣人族がこれからどうするかを決めておきなさい」


 女神教がいなくなれば、獣人族は自由にどこでも住めるようになる。


「それについてだが、時間をもらえないか? 実は結構前から話し合っているのだが、決まらん。何しろ、獣人族と一言でまとめられているが、色んな種族がいるからな。南部にそのまま住みたいという者から西部の森に帰りたいという者まで様々なのだ。戦後に話し合って意見をまとめたい」


 獣人族は種族もバラバラだし、数も多いからなー。

 大変そうだ。


「わかりました。別に焦って結論を出す必要はないですからじっくり考えなさい。エックハルト、一応、聞きますが、エルフは?」

「俺達は何も変わらん。今まで通り、南部の森だな。一部は世界を見てみたいからと言って、旅をする者もいるようだが、基本的には皆、森の中だ」


 まあ、エルフはそうだろうね。

 もっとも、ヴィルヘルミナは王妃様を目指すんだろうけどね。

 あいつ、ヨハンナに弟子入りしてたし……


「ヒミコ様、ハーフリングはどうする気だ?」


 ジークが聞いてくる。


「あいつらは森から出てきません。引きこもりです」


 マジで出てこない。

 たまにエルナが遊びに来るくらいで他のハーフリングは本当に出てこない。


「まあ、そういう種族だからな…………それとハーフの連中はどうするんだろうか?」


 獣人族と人族のハーフか……

 ジークも半分とはいえ、同族だから気にかけているんだろう。


「カルラはあんたのメイドに戻るんでしょ?」


 私はランベルトに確認する。


「当たり前だ。あいつは優秀だからな。ヴィルヘルミナもいるが、今後は忙しくなるし、人手が必要なんだ。だから獣人族と人族のハーフの連中は俺がもらったぞ。金をやるって言ったらあっさり来た」


 こいつ、手を出すのが本当に早いな……


「カルラはいいって?」

「むしろ、あいつが進言してきた。ハーフの連中は見た目が人族だし、人族の町には馴染みやすいから使えるって」


 カルラが言ったのか……


「あんたって、本当に種族を気にしないのね」

「ウチのメイドを見ればわかるだろ。カルラとヴィルヘルミナは優秀なのに、人族のアホ姉妹が使えんばかりか仕事を増やす」


 ランベルトがテーブルに突っ伏して寝ている東雲姉妹を睨む。


「…………この子達は特殊だから」

「知ってる。こんなのがそこら中にいてたまるか。とにかく、ハーフの連中は俺がもらうからな。獣人族の連中にも声をかけているのだが、中々、首を縦に振らん」


 獣人族にまで声をかけているのか…………ん?


「おい、ランベルト、ウチの連中が今後のことで揉めているのはお前のせいじゃないだろうな?」


 ジークも感づいたらしい。


「多分、そうだろう。俺が森なんかにいるより、俺のもとで功績を立てた方が儲かるし、いくらでも食べられるぞって言ったらその場で悩みだしたし…………お前もどうだ? 将軍に取り立ててやるぞ」


 こいつのせいらしい。


「ジーク、ゆっくりでいいから……時間はたっぷりあるから」


 私はこめかみを抑えだしたジークに優しく声をかけてあげた。

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