8 マタタビ
ミヤコが選択物を干していたとき
たまたま耳にしてしまった
「やっぱり〝マタタビ〟は危険ねぇ……」
「……??」
マタタビとはあのマタタビだろうか
猫に嗅がせると 酩酊状態になって活発になる
一度親戚の家の猫に嗅がせて襲われたアレか
「ミヤコが陶酔したらどうなるのだろうか……」
俺は庭を離れない程度でミヤコの視線を掻い潜り
森の入り口付近でマタタビを探した
するとサルナシの実に似た木の実を発見
早速 仕込みを終えているお昼のシチューに刻んで入れる
人間にも害は無いが 当時の俺は当然知る由もないので
今思えば安直で危険なことをしていたな
「お昼にするよお兄ちゃん!!」
「あっ…… うん!」
いざ実験開始
何の疑問も持たずにミヤコはシチューを飲む
試しに俺も飲んだが 癖になるくらい美味かった
「あれ……?」
突然ミヤコの身体がフラつく
額に手を当てる彼女は千鳥足で立ち上がり
汗ばんだ顔で俺に一言入れる
「なんか…… 調子が悪いからベッドに横になってくるね……」
「あ…… うん……」
弱ってるミヤコの顔は可愛かった
なんて思うよりもまず罪悪感が襲ってくる
取ってきた木の実は悪い物だったかもしれないと
慌てふためく時に 解決出来るのは自分しかいないと分かれば急に不安になる
取り敢えず水と氷枕を持ってミヤコの寝室に向かう
謝罪の一言を添える覚悟でいざ扉を開くと
「フン!! フン!! フンフンフン!!!!」
ベッドに寝っ転がっておらず
床で腕立て伏せをしているミヤコがそこにいた