7 七夕
ミヤコにお願いして 笹竹を調達してきて貰った
今日はあっちの世界では七夕なので便乗しようという訳だ
何せ近所では誰もやっておらず テレビでしか盛り上がってない
保育園が最後だったかな 短冊に何をお願いしたのだろうか
「うーん……」
「ミヤコは欲しい物とか叶えたい夢は無いのか?」
筆を持った手で顎を押さえているミヤコも
ずっと目を閉じて悩んでいた
「永年の夢だったお兄ちゃんは手に入ったし……
いざとなると迷うわねぇ お兄ちゃんは何を書いたの?」
「……決まってないんだ ちょっと外に出て来る」
「鍋の用意が出来ているから すぐに戻ってきてね!」
ログハウスの隣にはミヤコお手製のブランコが設置されてある
俺が退屈しないように密かに作ってくれていたらしい
ブランコで遊ばない小学生も増えているが
自分もまた腰を掛けるだけで 無邪気にはしゃごうとはしなかった
だけど改めて保育園に通っていたときのことを思い出せる
当時から友達は少なく 亡くなった両親のことばかりを引き摺っていた
「父ちゃんと母ちゃんに会いたい…… そうだ……
保育園の短冊にはそう書いたんだっけ? ……いや違う」
その時はもっと単純に夢を抱いた筈だ
「〝家族が欲しい〟だ…… その日は婆ちゃんが入院した日だ……」
不幸が立て続きに起きて
急速に独りぼっちになることを身を持って知った辛い思い出
だけど不思議と俺は元気を取り戻し 食卓を整えるミヤコのもとへ
「僕…… 夢叶ってたかも……」
「えぇいいなぁ!! どんなのか教えてよ!!」
「それは…… 言えない……」
「えぇ~~」
親戚に迎えられたとき 自分の気持ちに素直になっていれば
少しくらいは上手くやれていたのかな
小学生は下手に物心が身に付いているものだが
言いたいことをはっきり言語化できないのが もどかしいんだよな
「新しい願いは決まった! 町に行きたい!!」
「フフフ…… なら叶えて上げないと可哀想よねぇ!」
「ミヤコは決まってないのかよ?」
「私は…… このままがいつまでも続けばいいなと思ってます!」