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67 父と娘の最後の会話


おそらくホズミナはもう 目も光も見えていなかったんだと思う


「俺さぁ…… 酒やめられたんだぞぉ

料理の隠し味に使っているが熱でアルコールが吹き飛ぶから問題無しだぁ……」


「すごいねぇパパ! じゃぁまた…… 三人で暮らせるね!」


「そうなんだよぉ…… 今度は…… 今度こそは殴ったりしないからなぁ……」


「……うん信じる 信じるよ! だって私に一度も手を上げなかったから」


ホズミナは何が見えていて独り言を呟いているのだろう

そしてミキョシィはただただ彼のボヤキに合わせて会話を成立させている


「ママと会ったら一先ず土下座だなぁ…… 百回くらい頭を下げれば許してくれるかなぁ」


「パパが本気で謝れば許してくれるよぉ」


「だよな…… だよなぁ……? 一度は愛し合った仲なんだ 結局は許してくれるだよママは」


「私も協力するからさ…… また一緒に暮らそうよ」


「あぁ…… あああああ…… ああうああ…… ありがとうな…… ミキョシィ……」


言葉は無くなり 絞り尽くす限りの声を出し終えた後

彼は静かに瞼を閉じて深い眠りに就いた


「お休みなさい お父様……」


実を言えば俺も最期にホズミナと言葉を交わしたかった なので少し後悔している

やろうと思えば出来たかもしれないけど 残された全てをミキョシィに譲って上げた

これが優しさとか気遣いとか空気が読める男なのだとすれば 人に気が利かせるのも大変だ


抱き上げていたホズミナの頭をそっと草むらに寝かすと

ミキョシィは何故かアンスターのところへ向かう 彼は辛うじて生きてやがった


「クソォ…… これだけ手駒揃えてなんで全滅寸前んだよぉ……!!」


「玩具を大切にしなかったからじゃない? それで小さい頃よく母親に叱られなかった?」


「……お前!? おぉやっぱり私の手元に戻って来てくれたのかい?!」


「……フフ♪」


彼女の手に握られていたのは剣 そこらに落ちていたのを拾ったのだろう

そしてギルドの人間も集まって来ていて そこらの野次馬も含めれば結構な人間が彼女らを見ている

自分も薄っすらと予想していた当たり前の光景 誰一人としてミキョシィの邪魔をする者はいない


「おい誰か助けろよ!! 私はこの街の街市長だぞ?! 私がいなくなったら困るぞ貴様らぁ!!!!」


「答えは出てるじゃない…… ちゃんと現実を見なきゃだね!」


彼女の手の動きに迷いはなかった

自分の歩んできた差別への復讐かそれともホズミナの敵討ちか

どちらにせよ黙って見ていた俺には理解出来る行為だった



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