61 ミキョシィとホズミナの出会い
トゥイッタは私から離れて旦那さんの腕の中へ 見えなくなるまでその子は私を見ていたが
私の決断にはトゥイッタも少なからず理解があったのだろう 我が儘を言わない強い子供だった
そして残る私も人を選ばなければならないのだが 正直誰でも良かった
母親から託されたトゥイッタが幸せになる事だけを生き甲斐に今まで頑張って来たのだから
不思議なくらい身体から力が抜けていき その場に座り込む
それを見ている店主はもう何が何やらという表情だったが
時は金なりの精神で次のお客へのセールストークに勤しんでいた
「いらっしゃいませぇ!! 今日も閉店セールでっせぇ!?」
「……娘」
「へ??」
「娘を探しているんだ……」
酷く窶れた男は心ここあらずで商品を舐め回す様に見ていた
店主も商品の奴隷達も こいつはただの冷やかしだと心の中でシンクロする
しかし私は見えてしまっていた 彼の心の中の闇を
「はい! 私が娘になります!!」
「えっ……?」
「私も2,0000ギルアだよね店主?!」
「え…… あ…… あぁ毎度あり……」
私は新しい飼い主の背中を押して颯爽とその場から立ち退く
例の人攫い屋達が私の方を見て近付こうとするが ここ最近で運が私の方に向いた
彼はホズミナというギルドの人間 しかもそこそこ名の知れたベテラン冒険者
こんな廃人寸前のオーラを醸し出しても怖れられるとは相当の手練れなのだろう
「何で俺の奴隷になった?」
「だって独りぼっちなんでしょご主人様? 独りぼっちが寂しいんでしょ??」
「…………」
「私ももう家族が居ないから互いに補えると思うんだけど?」
「……随分と威勢の良い奴隷だなぁ 今日から俺の事をお父さんと呼んでくれるのか?」
「はいお父様♪」
あの頃のホズミナは本当に死人の様な男で心配だったけど
次の日からケロッと元気になったのはビックリした
私はあくまで代わり 私だって母親の代わりはいないと思っている
だけど気の許せる相手なんて匆々見つからないのは解り切っていた
ホズミナは奴隷の私を本当の娘の様に可愛がってくれたから だから
自分が帰るべき場所はもうあの人のところだけなんだ
私にとって特殊能力の使い道は〝標〟
大好きな人が遠くに居ようとも会いに行ける愛に飢えた者の使い方
「お父様!」
「ミキョシィ?? ……危ない!!」
人の心は読めても 飛来して身体を貫通する無機物に心の声など無いから避けようがなかった