60 ミキョシィが求めたもの
外で待機している人攫い屋の目を掻い潜って裏路地に入る私達
しかし完全に相手を撒くこと叶わず 数人が屋根の上を伝い早くも見つかる
「ハァハァ……!!」
人に追われる生活にて 日々蓄積される疲労が限界に達していた
しかし居場所を悟られぬよう必死に声を押し殺す子供を見れば
重い足を地に委ねるわけにもいかず 必死に自分で自分に鞭を打つ
「ごめんね…… 一緒に生きようねトゥイッタ」
「ヒグゥ…… うん……」
逃げる最中に不意にこの子の母親との思い出を振り返っていた
自分のお母さんでない辺り とても淋しさを感じてしまっていたが
何故自分の子にトゥイッタと名付けたのか そういう何でも無い話
母親は特に深い意味は無いと ただ日常で小鳥が囀る様に
いつも元気なトゥイッタの笑い声が聞ければそれが一番の幸せと言っていた
思い返せば私のお母さんとの会話は衰弱していた為か 死別まで極力少なかった
だからなのか 母性に飢えれば母を求め 寂しいと感じれば他人の母親や長老に甘えた
「……お母さんに会いたい」
日が差さない物陰に隠れれば 子供を不安にさせまいと必死に堪えていた感情が涙と共に流れる
必死に塞き止めようと努力するも そう簡単には上手くいかないんだよな
子供を抱き締めて勇気を振り絞ろうとする私に 路地の出口を伝える光が差し込んだ
そこは三番街の奴隷ショップが犇めく広場
大半の人間が枷と鎖で繋がれ 二人にしてみれば地獄そのもの その筈だった
「さぁ安いよ安いよ!! 終わる終わる詐欺上等の閉店セールだぁ!!
持ってけ泥棒!! 早い者勝ちだよぉ!!」
店の裏手に回っていた私は考えた どうせ二人で行動しててもトゥイッタの命の保証が出来ない
だから敢えて枷と鎖で両脚を繋げて表に立ち 自ら見世物となった
しかし客を選ばないわけでもない そこで私の特殊能力の出番だ
「そこのご夫婦達!! この子はどうですか? 掃除から畑仕事まで何でもやりますよ!?」
奴隷を養子感覚で物色している夫婦の心を読み取り 任せられる人達だと判断した私は
トゥイッタを店の前に出して猛アピール これには店主も思わず大混乱の表情を見せる
何しろ身に覚えのない商品が 自分顔負けで客を引き留めているのだから
「まぁ綺麗な髪…… それに色白ねぇ! 没落した貴族から流れて来たのかしら」
「店主! この子はいくらだい!?」
「えっえーとぉ…… うちは一律2,0000ギルアでっせ!! 毎度ありがとうございましたぁ!!」