53 唯一安心できる場所
街市長は蹌踉けていてテーブルなどの支えがなければ立っていられない
その隙に俺はミキョシィの鎖を外そうとするが
「これ鍵がないと駄目な奴?」
「街市長の胸ポケットにぶら下がっているのがそうよ!」
俺が彼を睨み付けるが 彼もこちらを睨み返してくる
時間が経てば経つほどこちらが不利になるのは解っていた
外の消火が済むのも時間の問題 早いところ彼女を連れて逃げなければ
ーー近い場所ならギルドが一番安全かな……
再度俺は街市長に近付く 相手は警戒しているのでそう易々と鍵を明け渡してはくれない
がしかし 試しにちゃいちぃな雷魔法を彼の身体に流し込めば忽ち気絶させてしまった
「か…… 勝った!」
すぐ様に鍵を取り上げてミキョシィを解放 しかし何故か彼女から説教を食らう
「何で君が魔法を使えるの?! それは人を殺せる危険な物なんだよ?!」
「……ミヤコと同じこと言ってる」
「……まずはここから逃げることが先決ね 裏から出るよ心晴君!」
「うん……」
鎖から解放された途端 表情も柔らかく人間らしい本来の貌を取り戻したミキョシィ
ちゃんと理解などしてはいなかったが これが奴隷を解放する事なんだろうと俺は誇らしげだった
「ホズミナはやっぱり助けに来なかったなぁ……」
「分かってたの?」
「それが今の時代の背景だからねぇ」
「……それはホズミナへの偏見じゃないのか?」
「……ふ~ん?」
一階の食堂の窓からこっそり抜け出す二人は一般人も通る道に出る
街路樹の死角を利用してギルドの方へと向かうが 走っている最中にミキョシィは俺に質問した
「ギルドが安全って思っている?」
「うん…… あそこにはミヤコもいるし ホズミナも来てるかもしれないし」
「君にとって大事な場所??」
「昨日初めてこの街に来たんだ 大事ってほどまだ居着いてないよ」
「それなのに信用してるんだ…… 心晴君は可愛いね」
「っ……! 急に何?!」
そうこう話し合っているとギルドの前に辿り着く
俺は扉を引けば相も変わらずの酒臭さに見舞われると思っていた
カウンターにはミヤコが座っていて優しく俺を出迎えてくれる そう思っていた
「奴隷がいたぞぉ!! 街市長から逃げたレア物だぁ!!」
「こいつ捕まえたら報酬と信頼と名声とでウハウハだぜぇ!!」
「え…… え……??」