51 自分は悪知恵が働く悪い子なのだろうとこの瞬間に認めた
「ミキョシィよりも僕の身の方が大事なの?」
「あぁ…… それに比べて…… 奴隷は替えが利く」
「嘘つき!! 子供は大人より嘘を見抜くのが得意なんだぞ?!」
「大人になれ心晴!! 現実は勢いだけでどうにもならねぇんだよ!!」
「自分は大した大人じゃないって言ってたクセにここぞとばかりに偉ぶるな!!
〝大人になれ〟って言葉 僕が一番大っ嫌いな言葉だ!!」
「なっ……!!」
「ホズミナが大人振ってるだけだろ!!
そうやって割り切っちゃえば 逃げれば全部解決するかもしれない
だけどそれは周りに遠慮して損する事に我慢を覚えたつまんねぇ大人の屁理屈だ!!
僕は違う!! 今ここでミキョシィを見捨てたら一生後悔するって分かってる!!」
「心晴…… お前……」
「ハァハァ…… 本当はこのセリフ…… ホズミナに言うつもりじゃなかったんだ……
……僕とのパーティーは今日限りということで」
一方的に一日共にした相棒を斬り捨て
俺は一足早く二番街へと走っていってしまう
「アイツ…… 酒が入った袋を持ったまんま行きやがった……」
街市長の住んでいる家は大抵人に尋ねればルートが定まる
予想していた通り二番街でも一番大きい
あのギルドよりも日照権で揉めそうなお屋敷が構えられていた
中からは奴隷の悲鳴が聞こえてくる 男性の声だからミキョシィではないだろう
「この家にどれだけ奴隷がいるんだろう……」
俺は持っていた酒瓶をコルクも抜かずに屋敷の前で叩き割る
門番に見つからないようにこそこそと柵付近の木に酒をぶっ掛ければ
お得意のちゃちな雷魔法で着火させた
「学校で一番楽しかったのこれだったなぁ…… アルコールランプに火を着けること」
徐々に黒煙を生み 天高く上ることでようやく門番達も気が付く
「おい火事だ!! 水持って来い!!」
慌てふためく門番が取り乱せば 何の障害も無く門を潜って屋敷の敷地内へ
番犬も火に向かって吠えているので建物の玄関まで難なくスルー
勿論中から使用人だの何だのゾロゾロと人が外に出て来るので騒ぎに乗じて玄関を潜った
階段を警戒して登っていく 大抵の親玉は高い所が好きなのは漫画で履修済み
街市長のあの性格を見ても〝見晴らしが良い〟とか〝日の当たり具合〟とか
取り敢えずマンションで部屋を選ぶ時なんかの条件は全てクリアさせるだろう
だから直射日光が当たらず されど木や建物の角度で陰気な場所にならない部屋
屋敷東側の端から三番目 自分が秘密基地を作るならここが良いと思わせる快適な場所だ