4 家の地下室
ミヤコは相当博識と踏んでいる
表にはあまり出さないが
必要最低限の会話でスマートにフランクに完了させている節が見て取れる
地元の人じゃない 学校の先生に似た言語一つ一つの重さ そして威圧
「この近くには学校とかあるの?」
「学校とは?」
「えーと…… 勉強する場所」
「少し南へ下った先に学び舎がありますね
知り合いが経営している小さな子屋で行われています」
「ミヤコもそこに通っていたの?」
「私には…… そんなお金は無かったかな……」
「……」
半分本当で半分嘘をついてた
ここログハウスの地下には小さな空間がある
以前にミヤコが 夜更けの頃に降りて行くのを尾けてみると
カンテラ頼りの暗い階段の先には
壁と床に貼り付けられた本棚が かくれんぼを出来るほどに並んでいる
デッドスペースが見当たらないくらいに書籍はぎっしり収納されていて
その一番奥にある一人用の机に座るなり ミヤコは調べ物を始めた
何時間もそこを動かないこともあった
俺はかくれんぼ気分だったから ずっと気配を消して彼女を見ていた
朝方には いつの間にかミヤコは上に戻っており
ベッドに俺がいないのを気付いて心配している声は
それはそれは 地下の隅で寝ている俺の耳にも届くほど
「入るなら一言告げて下さい…… 何処に行ったのかと思いましたよ」
「……」
俺はこのとき あれだけミヤコが必死になってくれたことが
とても嬉しかったんだ
素直になれず ソッポを向いて謝りもしなかったが
おそらく気持ちが昂ぶっていて それどころではなかったのだろうな