43 しくじり
「ホズミナのお陰でその辺の奴隷よりは辛くなかったわ
優しいし何もしてこないし 本当に私をただ娘の代わりとして接してくれているのよね」
「アイツにも本当の家族がいたのか?」
「居たからこそ…… 何かがあったからこそ……
彼の考え方があなた寄りになっているのかもね
聞いた事はないけど命の重さを知るキッカケが生じたと私は予想してる」
「……ホズミナにもホズミナなりの嫌な過去が」
「心晴君だっけ? 君はこの世界の人間では無いよね?」
「何で分かるの?!」
「私の家系はそういうの見破れる体質だから 人攫い風に言うと〝レア物〟なのよ」
「ふーん……」
話もある程度一段落すると それでも帰ってこないホズミナに不安を抱き始める
「ちょっと中を覗いて来ようかな」
屋根を降りて下水の入り口に赴く
待機を命じられたミキョシィはその場から離れることはせず
視界に入る範囲で遠くの自分を注視して見守る他なかった
そんな彼女の背後には人影が まるで動物を捕獲するかの器具を携えて忍び寄る
一方でホズミナは 下水道をある一定の距離を進んだあとで引き返していた
理由は下水の中が入り組んだ迷路の様になっていた為に探しようが無かったのだ
そんな彼に光差す出入り口付近に辿り着いたとき 丁度様子を見に来た俺と鉢合わせする
「……ミキョシィは?」
「えっ?」
ホズミナは急いで屋根を登る そこに人の気配は無く
置かれていたのは持って来た荷物だけだった
「……やられた 人攫い屋だ」
その時の俺は酷く動揺していた
話を事前に聞いていた筈なのにミキョシィを一人にしてしまったという罪悪感が襲ってくる
しかしホズミナは俺を責めずに荷物をまとめて隅に隠すと
「ミキョシィを取り戻すぞ心晴!!」
「う…… うん!!」
俺は彼の後ろを目で追って必死に付いていき
ホズミナの言う人身売買のオークションが行われる【三番街観賞用多人種専門店】へと向かった