41 ベテランの箔
盗賊団のアジトは 隣の五番街の石造りのアーチ橋の下にあるという情報を得た
身体を横にしなければ入れない細道を通って忍び寄り
ホズミナが橋の上から下をそっと覗くと そこには人一人入れる下水道の入り口が
しかしそう離れてないにも関わらず異臭が漂ってこない辺り違和感を感じた
「あそこは何十年も使われてない筈だ…… 異臭もしないってんなら怪しいな」
「誰もここを調べようとしなかったのかなぁ……」
「汚ねぇ所はギルドの連中でも遠慮がちなんだよ」
「……じゃぁギルドのトイレ掃除は?」
「従業員がやってるんだろうなぁ 冒険者はまずやらねぇ」
ホズミナは橋下の遊歩道に出ると下水の入り口付近を確認する
都合良く人の出入りなどは無かったが 下水道の中は音が結構響くもの
入り口付近と合わせて静か過ぎる事に彼は疑念を感じていた
「罠か…… いや賢い盗賊団ならもっと存在感を消す筈
そりゃぁもう街からギルドに依頼が来ないくらい 窃盗騒ぎすら起きないレベルと考えるのが妥当
故に矛盾が生じてやがるのが気持ち悪い
賢い故に待ち伏せしてやがるのか 真っ昼間だから全員爆睡している馬鹿の集団か
だとするとさっき捕まえた奴は何だ? 奴だけ元気に一人で窃盗してたってのか……?」
俺とミキョシィが橋の上で待機してるとホズミナが帰って来た
ベテランのクセに締まりの無い顔で戻ってくる彼に 俺は少し失望している
「屋根に登るぞ」
三人は橋の見えるすぐ近くの民家の屋根に移動した ここで俺はホズミナに質問した
「さっきの罠といい 無断で屋根を登ったり 住民達に怒られないのか?」
「協力者だから大丈夫だ…… 物を壊しても依頼を達成すれば見逃してくれる融通の利くロジックだろ?」
「ふぅん……」
手際が良い 俺がホズミナに抱く印象はそれだ
行き詰まりを感じさせず予期せぬ自体をも含めて慣れてる行動で仕事を進めていく
まるでRPGの二周目をやっているかの感覚だった
「二人はここで待機だ 俺が一人で下水の中を調べてくる訳だが……
絶対にここから離れるなよ? そして何かあれば俺を置いてギルドまで逃げるんだ いいな?」
「うん……」
「頼んだぜ心晴!! ちゃんとミキョシィを守ってくれよ?」
「大丈夫だよ 俺だって魔法使えるし!」
「ヘへっ!! 勇ましいじゃないの相棒!!」
背中を叩かれ ホズミナは必要最低限の荷物だけ携帯して身軽に中へと入って行った