35 年齢に差がある、ヤローとの付き合い
一方ミヤコはすぐに俺を捜しにギルドを出ようとしていたが
不意にコップを磨いているマスターに止められる
「まだまだこれからが試練じゃないかい?」
「……十分試練は与えているつもりです」
「この街に馴染むこともあの子のこれからだと思うけどねぇ~」
グラスの外側に吐息を吹き掛けてキュッキュッとまた磨き始めるマスターは
ミヤコの心を落ち着かせる為にオリジナルのカクテルを作って上げたそうな
「レモンのはちみつ漬け お茶 そしてブランデー
名前を付けるとするなら〝ホストマザー〟
心を落ち着かせる昼時に最適のカクテルでございます」
「……マスターが腕によりをかけたミクソロジーってことね」
椅子に戻るミヤコは胸を逆撫でして出された物に一口付ける
「親元を離れて巣立っていくのを見守るのも努めだよ
ホズミナは信頼出来るギルドの仲間じゃないか!」
「えぇ…… 彼に連れてかれたのを心配してる訳ではありませんが……」
「ボーイにとってホズミナは良くも悪くも社会勉強になる……
それに彼のことだ…… 子供相手ならめっぽう優しいからね」
「……二年前の件ですか」
「えぇ…… 力になってやれなかった……」
そして場所は銭湯の脱衣所に戻る
気分が悪い俺を気にしてくれたホズミナは
街市長に気付かれないよう避難させてくれた
「しかしまぁ自己中の守銭奴に出くわすとは運が無い」
「……悪い奴だよなアイツ 人間を鎖で縛ってイジめるなんてよ
僕だったらあんなヒョロヒョロのおっさんぶん殴って逃げるのに」
「……まぁ思うのは人それぞれだよなぁ 坊主は奴隷制度に反対か?」
「心晴…… 僕は雲雀心晴だ! 弱い者イジメは大っ嫌いだよ!!」
「そうか…… そっかぁハハハ!!!!」
「なんだよ……」
「よっしゃぁ!! 今日はもう暗くなるし 俺の家で泊まって行けやぁ!!」
ホズミナの腕は俺の後ろ首をヌルんと囲み
やや強めの絞めがうざったらしく思いながらも
夕陽をバックに千鳥足でホズミナの家へと向かった
この時の俺はホズミナを 家出してきた遠縁のオジさんと重ねていたが
それはあとに後悔するに十分な警戒の解れと 心の寄り添いの始まりだった