34 足首辺りが痛そうな人
「……あれマスター ここに小さい男の子座ってなかった?」
「フロアを盛り上げてくれたボーイかな?
それならホズミナと一緒に外に出ってたよ」
「えぇ?!!」
後で分かった話だが
ミヤコは単に大きい薔薇の方で苦戦していただけだったそうな
そんな衝撃の事実が起こっている事など露知らず
俺は取り敢えずブドウ酒塗れの身体をどうにかするべく
ホズミナに連れられて石造りの銭湯に来ていた
「服まで買ってもらって…… ありがとうおっちゃん」
「ホズミナだ…… 歳も30だしそこまでじゃぁないだろ?」
「……おっちゃんだよ」
けして綺麗じゃない湯船だった
泥も混じっていて豪華な旅館とは程遠いもの
ミヤコの家のお風呂が透き通っていたのは 森の水が綺麗な証拠だったのだろう
ここの風呂屋は森の川よりも酷い
「ぅおあぁ~~…… 今日は何もしてないけど良い湯だぜ~~」
「……ハァ」
俺は正直眠くなっている
あれだけ険しい試練を克服したんだ
その達成感は大いに噛み締め
心にゆとりさえ生まれる理想と呼ばれる解放的な一風呂だ
「おいおい……! 入浴中に寝るんじゃねぇぞ?」
「んぇ? あぁ…… ……ん?」
突如地響きが俺達を襲った
目元の波も荒ぶり始め 周りの男達も徐々に動揺し始めた
浴場の入り口から大きな頭を潜らせて入ってくる大男
「誰だアイツ……」
「こりゃぁツイてねぇなぁ…… 〝街市長様〟のお出ましだ」
「あの大きなおっさんがか?」
「いや…… その後ろだ」
よく見るとその巨漢の足首は枷と鎖で繋がれていた
手綱がある訳でもない
されど逃げようとしない飼育されてた人間以下の証明
その後ろから普通サイズの人間が高笑いしながら
「うん…… 今日も奴隷の散歩日和だったよ諸君!!
労働ご苦労!! 納税ご苦労!! 私の懐は肥えて今日も気分が良い!!!!」
「ここエレクトリシティーには六つの街があるのは知ってるな?
一番街二番街ってその街ごとに街市長と呼ばれる……
まぁリーダーみたいな奴等がそれぞれ六人いるんだ
ブラン領の王族に代わってこの街の統制を任されているんだな」
「ふ~~ん…… ゴボボ……」
逆上せ気味の俺は話半分で聞いている
だけど気になるのはその街市長の隣にいる大男
もっと言えば足に巻き付いてる鎖だ
「お前もしかして〝奴隷〟を見るの初めてか?」
「うん……」
当然だ
俺が住んでいた全ての場所で あんな心が痛む奴なんか存在しなかった