33 美酒
周りは騒然とする
俺を取り巻く 物珍しさに集まったギルドの奴等も目を見開いていた
勿論さっきから偉そうに隣に座って保護者面しているホズミナも同様で
「じゃぁ何か? あの猛獣だらけのヌコの森を
ミヤコさんにおんぶして貰ってこの町まで来たってのかい?」
「この四日間を使ってミヤコの試練が行われたんだ
森を出てお使いに行けるかどうかってね……
それで僕だって巨大な熊を倒したんだぜ!?」
大の嘘をついたが 不思議と周りは信じ込み始める
その納得の行き様は逆に気持ち悪いほどに
「さすがミヤコさんの弟子って感じだよな……」
「俺は初めから気付いていたぜ?
ミヤコさんの隣にくっついていたちゃっこい子もただ者じゃないってな!」
自分がエピソードを語れば語るほど
何故か店内の活気は増し
座っていたカウンターのマスター曰く
「ミヤコさんがいらっしゃれば売り上げも高騰していたんだが……
そのお弟子さんもまた酒を飛ぶように稼がせてくれるねぇ!!」
と言うが未就学児の俺には分かりようのない話だった
ミヤコのトイレの長さにも驚き始めていた頃だが
身が竦むほど驚愕を覚えたのは
酔った勢いで起こり始めるメンバー同士の殴り合いだった
「おーおー始まったぁ!! いいぞもっとやれぇ!!」
隣でパンパン手を叩くホズミナの熱量も半端なかった
丸テーブルがひっくり返り その拍子に酒の水滴も宙を舞い
ブドウ酒がこっちに降ってきて全身紫塗れになる
「ギャハハハァ!!! ……じゃぁマスター勘定頼むわぁ!!」
一通りギャラリーの一員として荒れ具合を堪能したホズミナは
バシバシと俺の背中を叩き 出口の方へ向かって親指をクイクイッと
飛び交う物を自前の剣で弾き返しながら外へと連れ出してくれた
「あのままあそこに居れば怪我をして当たり前……」
「……ありがとう でもミヤコがまだ中に」
「ミヤコちゃんなら多分依頼を受けて生活費を稼ぎに行ってるぜ?」
「んな……?」
「心配させたくなかったんだろうなぁ…… 気持ち分かるぜぇ?
その上あの人は半日で何件もの依頼を熟すから
何回も行っては颯爽と帰ってくる彼女を見てて飽きねぇもんだ」
「……じゃぁそこら辺で待ってるよ」
「おいおい連れねぇこと言うなよ!
せっかく野郎二人っきりなんだ
これからもギルドに顔を出すなら付き合いが続く訳だし
この町を案内してやる!! 暇なこの俺に感謝するんだな!!」